世界拳闘紀行 第二回 タイ王国

WORLD BOXING JOURNEY

文:コビトロック
イラスト:Kimura

世界拳闘紀行 タイ
ボクシングってメジャーなのにマイナー印象のスポーツ(思うの俺だけ?)

 前回第一回を投稿後、世界の片隅のさらに隅っこのニッチオブニッチページなのに自分が思っていた何倍も読んでくださった方がいて、リアクションもいただいたりして嬉しかった反面、次回からちゃんと書かねば。とネット投稿初心者みたいなことを思いました。が、むしろ逆に暴走してツッコミどころ満載でいきやす。誰でも知ってる競技なのに微妙に大衆的ではない競技、そんなボクシングへの個人的な思い入れだだ漏れで。

国技がムエタイって考えたら凄い国だね、タイランド

 で第二回の今回は「タイ」! まず国技がムエタイってヤバない? 国技が殴り合い蹴り合いよ(いや我が国も相撲やけど)。
 その歴史を紐解くと、9世紀にはすでに源流があったといわれている。インドや中国の武術の影響を受けながら独自に進化、14世紀には王朝の軍隊格闘技として大きく体系化・発展・伝播。古式ムエタイは地方によってさまざまな流派があったという(カンフーや空手みたいや)。そして20世紀頭にラーマ5世という王様(「王様と私」のモデルとなったお方)がタイの近代化に合わせてムエタイのスポーツ化近代化に貢献。そして20世紀のはじめに現在のルールが固まっていったそうです。
 ムエタイの王者! と言えば2大スタジアムである、ラジャムダムナンスタジアムとルンピニースタジアムの認定王者が基本的にムエタイ王者として認知されている。他にボクシングのWBCが認定してるWBCムエタイ王者ってのもあるね。

タイ 寺院
打倒ムエタイ!ムエタイコンプレックス

 そもそもそんなムエタイを輸入して売り出す為に1960年代に日本で「キックボクシング」という競技が生み出されたので、日本のキックはムエタイと関係が深いどころではなく、延々と打倒ムエタイがテーマで、ある意味ムエタイコンプレックスが根底にあったといえる。
 話がボクシングから逸れそうだし、この手の話始めたら本一冊どころじゃない広がりと深みになりますので止めます(てかそこまで詳しくない)。

興味のある方はこちらを。超絶面白かった。格闘技史ではなく戦後興行史の最重要人物の評伝
「沢村忠に真空を飛ばせた男: 昭和のプロモーター・野口修 評伝」細田昌司(新潮社)

国際式?

 タイにおけるボクシングは、基本的に「国際式」と言われる。つまりタイ人にとって、ボクシング=ムエタイ。海外のルールに則る場合は「国際式=我々の知ってるボクシング」。ていう認識よね?だとしたらどんだけムエタイが当たり前に生活風景にある国やねん。で、我々の知るタイのボクサーのほとんどはムエタイ出身。後述する選手も当然のようにムエタイ出身である。

タイ 路地裏
ムエタイの超大物って言う触れ込みの信憑性

 ムエタイで強過ぎて敵がいなくなった選手が国際式に転向して…みたいなムエタイラスボス幻想みたいなのって日本にはありますが(もうないか)、実際は国際式では成功するもムエタイはさほど。逆にムエタイでは凄いけど国際式では今ひとつ。みたいなのもあって、一概にムエタイ最強=国際式も最強。ではないみたい。要は別モノなのでどっちが向いてるか。みたいなもんが多そう(と、いう訳でムエタイではなくキックやけど、現在話題の例の神童・那須川天心も現段階では分からん。というのが自分の見解)。
 それにムエタイはギャンブルなので、賭けに向いたファイトができない選手が国際式に転向ってのも多いらしい。

タイ人タイで強過ぎ問題

 長〜いタイと日本のボクシングの歴史で、タイ現地での世界戦で勝利した日本人は(暫定だけど)江藤光喜ただ一人。後、輸入ボクサー入れるなら勇利アルバチャコフ。異常に暑いことと試合が始まるタイミングが分からない(入場してからもず〜っとセレモニー続くとか)。試合前にも延々妨害工作があるetc…など嘘か本当か都市伝説並の話も多く聞く。ま、本国で無様な姿だけは見せれん!という選手の気張りが最大の要因か。
 「好きな男性のタイプはタイでタイ人に勝つような人」と言った女性ボクシングファンがいたが、そんなん俺でも惚れるわ!

タイ 大仏
そんなタイの栄えある初代王者は

 1960年にあのパスカル・ペレスを破ってフライ級王者になったのが、タイ初の世界王者ポーン・キングピッチ。この選手からタイトルを獲ったのが若干19歳(童顔ってだけじゃなく実際に少年だったのね!)のファイティング原田。でも3ヶ月後のリターンマッチで即獲り戻したよ。で、この王座を奪ったのが海老原博幸。でも4ヶ月後のリターンマッチで即獲り戻したよ。
 今映像を改めて観返すと端正なアウトボクサーで、正直いって個人的には原田より全然好きなタイプだ。

エピソードだらけの世界最短男

 70年代に活躍したのがセンサク・ムアンスリン。何とボクシング3戦目で世界獲りました!この記録今でも破られていません(ロマチェンコでも2戦目は無理だったもんね)。試合中に水をガブ飲みしたとか、ガッツ石松を攻め倒した後でソープランドをハシゴして嬢を攻め倒した、いや実は試合前もソープ行ったとか、エピソード豊富な豪傑。晩年はハーンズともやってます(3回KO負け)。

タイ 市場
この人がタイオールタイムPFP王者じゃない?

 「短足なのでムエタイでは大成しなかった」みたいなことをいわれるが、確かに上半身のマッスルボディに対し足はさほど長くは…。そんな名王者がカオサイ・ギャラクシー。名前がギャラクシーやで。地球レベル太陽系レベルちゃいまっせ、銀河系レベル(実際はマネージャーが経営するナイトクラブの名前だったような)。

あと顔が特殊メイクかってくらい恐い。こんな顔とリングで相対したくない。
 ともかく80年代後半〜90年代初頭にその異常な強打で(こっそり肘込みと言われたけど)KOの山を築いた。19度防衛して王者のまま引退。
 ちなみに双子の弟(兄?)カオコーも世界王者。計量の時はカオコーが出て来て、試合では一切減量してないカオサイで出る。だから試合になるとデカい。という噂も出るほどに強かった。日本人とも度々拳を交えたカオサイだけど、欲をいえば渡辺二郎、鬼塚勝也と観たかったなぁ。
 そういえば日本人女性と結婚(その後離婚)。

平成日本の宿敵と言えば

 辰吉丈一郎を2度に渡ってKOしたウィラポン・ナコンルアンプロモーション! ムエタイで3階級制覇! 国際式4戦目で王者! これらの実績から、辰吉第一戦前から(こいつヤバない? 辰吉ヤバない?)て空気があった。実際、デスマスクと形容される一切表情のない彼が繰り出す、一切の無駄なく正確に相手を削り取る攻撃に、ラウンドを追うごとに(辰吉が壊されて行く…)と思いながらTV画面を見つめていた。
 そして1年後の大阪ドーム(現:京セラドーム大阪)での再戦には足を運んだ。当時自分を含め勝って欲しいのは当然としても(辰吉の最期を看取る)つもりでいたファンも多かったのでは。で、今回もどんどん辰吉は削られて行く。7ラウンドにはウィラポン本人がチラチラとレフェリーに(止めてよ、危ないよ)と視線を送る。そしてレフェリーストップ直後に立ったまま失神して崩れ落ちる辰吉をとっさに支えに行くウィラポン。最悪な結果を突きつけられているけど最高にカッコ良過ぎるウィラポンも生で観れたのは自分の財産。

 その後、関西の次世代スター西岡利晃と対戦! この頃には辰吉経由でウィラポンファンになった人も多いのか、リングアナにコールを受けたとき普通の外国人選手にはない量の声援と拍手を受けていた。敵討ちを託せるのは西岡しか! との思いで見守るも、4度対戦しても(2分2敗)ウィラポンの牙城は崩せず。

タイ 象
ウィラポン応援ですが何か?

 そして長谷川穂積と2回対戦。長谷川ファンには申し訳ないけど、自分のアイドル2人を6回に渡って退けたウィラポンに感情移入してて、完全にウィラポン応援。でも悲しかったのは初戦の判定負けではなく、再戦での美しすぎるKO負け。名王者から名王者への正しすぎるバトンの渡し方。辛かったなぁ〜。で、その後は当然のように長谷川ファンになっていく自分。ボクシングファンの性である。
 そういえば長谷川のウィラポン対策として、ウィラポンは相手の呼吸を読み、息を吸う瞬間にパンチを打ち込んで来る。なので長谷川穂積はウィラポンの射程では呼吸を止めていたとか。もうマンガの世界。

気がつけば長期政権

 ムエタイではパッとしなかったし、ボクシングで王者になった頃は地味だったけど、気がつけば日本人キラーで合計23度防衛の超長期政権を築いたのがポンサクレック・ウォンジョンカム。ホイホイ感情移入しちゃう自分のセオリー通り、内藤第3戦目で判定負けする頃にはポンサク応援でございました。亀田興毅戦では亀田アンチが多かったこともあり、自分の周りではほぼポンサク応援一色だった印象。

タイ お坊さん
勝手な印象なのだが

 タイのチャンピオンって、富と名声を手にしたら満たされちゃって遊んで一度の敗戦で下降線タイプ。もしくは、ジムに管理して貰ってるか搾取されてるかは知らんけど、以前と変わらないストイックな生活を続けて長期防衛ロードを進む名王者か。の2タイプに分かれるイメージ。当然カオサイ、ウィラポン、ポンサクは後者。でも前者でも記憶には残る選手はいっぱいいるのだ。現状(2021年5月現在)シーサケットは後者にならないことを祈りつつも、もう十分記憶には残る選手確定。

タイ料理話で〆

 タイのボクシングについてあれこれ考えてると、タイ料理が食べたくなるねんな。以前、大阪難波でたまたま入ったタイ料理屋さんでグローブがレジの壁に無造作に釘で架けられてたので店の人に聴いたら「ウィラポン-辰吉戦のです」
…?
……!?
……!!ええ〜〜っ!そんなガラスケースに入れて大切にせなアカンもんやん!
 「はめてみます?」「いいんですかっ!!」うお〜手が震える〜! 「ここに辰吉の歯形が残っています」ホンマや凹んでる! というやり取りありました。この店にはあのアムナットも来阪する度に来るそうです。その後、ボクヲタ仲間との飲み会でも改めてお邪魔しました。
 料理は日本人の口に合わせたほどよい辛さで全て食べやすく金額もリーズナブル。普通にオススメ。 それではまた次回っ!

タイ料理専門店 TAI THAI なんば本店

タイ料理専門店 TAI THAI なんば本店 (難波(南海)/タイ料理)
★★★☆☆3.48 ■タイ人コックが作る本場のタイ料理店 ■予算(夜):¥2,000~¥2,999

 
 
そして行った事ないけど、いつかは行ってみたい場所、それがムエタイの殿堂2大スタジアム。

ルンピニースタジアム
ドンムアン空港の近くで、最寄り駅は「モーチット駅」との事ですが、徒歩はクソ遠いのでタクシー推奨らしい。


ラジャダムナンスタジアム
最寄り駅は「BTSラチャテウィー駅」か「MRTフアランポーン駅」でやっぱりタクシー推奨みたいやね。

 
 

カオサイTシャツ

カオサイが好きで自分用に1枚作ったファンアートのカオサイTシャツ。
カオサイとショッキングピンクという、真逆のイメージで作ってみた、
当然のように妙チクリンな仕上がりの一品。結構気に入っている。
 
 

Special Thanks!
写真撮影:村田修一

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