本の方舟 第一回「青春を山に賭けて」

ページを開けて、言葉と言葉を繋ぐと、
知らない世界の扉が開く。
行きたい所へ、いつでも行ける。

第一回
植村直己著 「青春を山に賭けて 」
文春文庫
 
 

 第一冊目を飾るのは、少年期の私に多大な影響を与えてくれた、植村直己著書『青春を山に賭けて』を選んだ。四〇年間、私の本棚に居座り続けている、長老的存在の一冊。

 このエッセイのベースは、彼が挑戦した冒険や五大大陸最高峰踏破のときに綴っていた日記がベースになっていて、青年期の人となりを身近に感じることができる。当然、五大大陸最高峰を踏破した冒険談は、面白いのは当たりまえ。でも、何よりも、私が魅了されたのは、冒険や登山を背景にした、彼の青春物語なのだ。青年・植村直己が青春の門をくぐり抜け、大人へと成長して行く様は、まるで私小説の如く感じられる。

 その中でも、特に人間味を感じ面白いのは恋バナだろう、大学時代に「ドングリ」と呼ばれていた彼が、旧友たちに『どうだ、オレってモテるだろう』と自慢しているように思え、ほっこりする話が随所にある。

 大学卒業後、就職もせずに渡ったアメリカの農園では、出稼ぎのメキシコ女性の大きな胸とお尻にノックアウトされ「美しい!」と伝える彼。アフリカ・キリマンジャロ、ケニア山単独登山では、入山管理局の役人から「単独登山は危険だ、野生動物に襲われる死亡事故があった」と教えられ、ショボクレてクラブで酒を呷っている時に、声をかけてきた黒人娘。その娘と朝を迎え、大人になった彼。フランス・モリジヌのスキー場で、旅の資金稼ぎ中に怪我をした彼を、甲斐甲斐しく看病するドイツ系フランス人のジョエルの話。アマゾン川冒険のため、ヨーロッパからアルゼンチンにわたる船でスペイン尼僧に恋した話など、等身大の青春が語られている。

 勿論、この一冊の中には、悲しい友との別れ、恐怖に対する葛藤、挫折、登頂の喜びが所狭しと溢れている。そして、なぜ単独行を行うようになるのか? その心の動きが彼の成長とともに描かれている。登山や冒険に興味がなくとも、パッケージ旅行のフランスやスイスの山岳地帯に行く方にも、是非、読んで頂きたい一冊だ。

 伝説の冒険家・植村直己は私の本箱の中で、まだまだ冒険を続けている。南極大陸単独横断のために。

「冒険とは、生きて帰ることなのである」
 
 

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居場所を変えて、約40年間も我が本箱に居座り続けている、
至極の冒険青春エッセイ。
※表紙カバーは大人の事情でお見せできません。残念ですが・・・

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青春を山に賭けて 文春文庫

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