世界拳闘紀行 第十二回 メキシコ 第四夜(00年代以降2)

WORLD BOXING JOURNEY

文:コビトロック
イラスト:kimura

そして現在にいたる

第12回メキシコ2000年代以降2。本当は前回でメキシコ編を終わらそうかと思っていたのだが、もう大好きなマルケス・バレラ・モラレスについて書き出したら止まれなくて、その3人だけで埋まってしまいましたわ…。
という訳で前回に引き続きクリスマスもメキシコ編を好き勝手に。

ティファナの台風が吹き荒れるよ!

アントニオ・マルガリート。好きやねん。例の問題から過去の彼の業績全てが否定されがちな風潮が少し寂しい。そら裏切られて悲しかったけど。
そもそもデビュー後は3勝1敗ペースの目立つようなエリートじゃなかったのも好き。でもそこからタフネスとしつこい攻撃でのし上がっていく雑草魂!
お互いそこまでビッグネームじゃなかったけど、あのセルヒオ・マルチネスに無冠戦で初の黒星を与えてたり。
その後、02年にアントニオ・ディアスにWBOウェルター級王座決定戦で勝利、念願の世界王者に。その後は破竹の快進撃…でもなく、階級上げてアンドリュー・ルイスの王座に挑むも敗戦。保持したままのウェルター級で防衛を伸ばす。

コット撃破!

その後、カーミット・シントロンやジョシュア・クロッティといった強豪に勝利し徐々に存在感を増していく。ポール・ウィリアムスに王座を奪われるも、シントロンとの再戦でIBF王座獲得。
そして人気選手で次のスーパスター候補ミゲール・コットと対戦。コット勝利→コットvsデラホーヤの規定路線の中、ポイントリードされながらもいつものタフネスとしつこい攻撃で追い上げ、終盤ついに捕まえて11回TKO!ここが彼のハイライトか。
で、コットの代わりにいざデラホーヤに挑め…ませんでした。デラが拒否ったので。

バンデージ問題

中量級の主役の一人となったマルガリさん。その後、シェーン・モズリーにKO負けし王座転落。しかし相手トレーナーからバンデージに石膏状の異物があると告発され、1年間のライセンス停止。前のコット戦含む過去の試合も疑惑の目で見られる事に…そらそう見られるよな。好きな選手だっただけにショックでした。
2年近いブランクの後、パッキャオと対戦するも大差判定負け。しかもこの試合のダメージで白内障に。2度の手術も元には戻らなかったという。その後はコットにリベンジを許し。衰えを実感し引退。(4年後カムバックして1戦1勝)

日本にもファンが多いよね、ジョニゴン!

ジョニゴンの愛称で日本でも人気の高いジョニー・ゴンサレス(ゴンザレスじゃなくゴンサレスね)。長い手足に一撃必倒の強打。加えて俳優みたいなルックス。そら人気出る。この選手はアマエリートなのにデビューから2戦連続負け。だからか雑草ぽさもあるねんな。
05年にWBOバンタム級タイトル獲得後、ベテランのマーク・ジョンソン、1回級下の王者フェルナンド・モンティエルを撃破、この勢いでスーパーバンタム級王者のイスラエス・バスケスに挑むも、大激戦の末にKO負け。
その後、持っていたバンタム級のタイトルもジェリー・ペニャロサにKO負けで手放す。何だろう、スター性はあるのにスターになりきれないみたいな。

西岡、そして長谷川

日本から王者西岡利晃を呼び寄せ、改めて2階級制覇に挑む。下馬評有利の中、初回にダウンを奪うも、3回に痛烈な左ストレート一発でKO負け。逆にモンスターレフトとして西岡の名が世界で高まる事となった。
ここで自分を変える必要を感じたジョニゴンは名トレーナー、ナチョ・ベリスタインに師事。慎重かつ大胆なボクサーに生まれ変わり勢いを取り戻したジョニゴンは、日本で長谷川穂積の持つWBCフェザー級タイトルに挑む。

時は東日本大震災直後。原発の放射能漏れで世界中が日本に近づかない雰囲気で来日どころじゃないムードの中「西岡はメキシコが豚インフルで大変な時に来てくれた事を忘れない。俺も日本に行って、日本は大丈夫だというメッセージを世界に発したい」と来日。カ、カ、カッケー!義理を忘れずリスクを恐れず!真のヒーロージョニゴン!
そして試合はジョニゴンの4回KO勝ち!見事2階級制覇。
ちなみに嫁さんは女子プロレスラーのセクシー・スターさん(すげえリングネーム)。

激しくも高度な技術エストラーダ

ロマゴンとの3戦で軽量級の顔となったファン・フランシスコ・ストラーダ。
ねえねえマルケス兄好き?心技体揃ったメキシコ芸術と呼べるファイター好き?ワイは一番好物なんよ。でこのエストラーダこそ、ワイが勝手に思うメヒコ芸術リカルド・ロペス→マルケス兄の系譜を継ぐ選手かと。全てがバランス良いコンプリートファイター。

世界初挑戦で一番強え奴とやるもん!

27勝1敗のレコードを引っさげ初挑戦した相手こそ、WBAライトフライ級王者ローマン・ゴンサレス。俺はロマゴンの最盛期はこのライトフライ級だと思うとるんじゃ。フライでも無敵の強さやったが、この階級こそが精緻さでは一番かと。その全盛期ロマゴンに無名のエストラーダが大善戦!お互いの持ち味を出し合った名勝負も、まだ世界戦での経験値がなかったエストラーダは徐々に際どくペースを取られ敗北。
しかしこの1戦で最後の覚醒。当時フライ級で無類の強さを誇った統一王者ブライアン・ビロリアから王座を奪う。

ライバルと3回やるもん!

その後も無人の野を行くが如く王座を防衛し続け、相手いないしスーパフライに階級上げる。そしてあのロマゴンを2タテした王者シーサケット・ソー・ルンビサイに挑戦!いやぁ観てて俺はエストラーダ勝ったかと思ったが、0-2で際どく判定負け。でも際どいのでダイレクトに再戦。今度はきっちり勝って2階級制覇。
そして21年3月に今度は王者としてロマゴンと再戦。初戦と同じく激闘の末、際どく判定勝ち!しかしロマゴンの勝利とする向きもあり、こりゃ3戦目必至!
22年12月にロマゴンとのラバーマッチ。今回も激闘の末、際どく判定勝ち。またもロマゴンの勝利とする向きもあり…おいおいいつまでやんねん!
毎回面白い試合とは言え、もうロマゴンとはお腹いっぱいかな。ちなみにこの試合でエストラーダは100万ドルのファイトマネーを突破したそうで。名実ともに軽量級の第一人者。でもファイトマネー高騰しすぎて日本に来てくれないのよね(2023年12月現在)。

そうよ私は蠍の男

ミゲル・ベルチェルト。あだ名はエル・アラクラン(蠍)。このニックネームどおり攻撃的かつ強打の選手。16年6月にスーパーフェザー級暫定王者を獲得してからは一気にこの階級の台風の目に。17年に1月にはWBC王者のフランシスコ・バルガスとの統一戦も11回KO勝利。
同年7月には元王者の日本の三浦隆司と対戦。この試合、三浦のボンバーレフトを警戒したか、意外にもアウトボクシングで完封。正直爆弾のぶつけ合いになるかと思ったので肩透かしだったが、幅の広さを見せつけた。

その後もKOの山を築き6度の防衛。ベルチェルト時代を築き、以前からのライバルのオスカル・バルデスの挑戦を受ける。かなりの有利予想も、いつもの精彩さを欠く動きのベルチェルトと対照的にバルデスキレッキレ。序盤からリードを許した末の10回衝撃的KO負け。
まぁバルデスを褒めるしかない。

そんな彼のTシャツ作ったよ!

もう蠍の針は抜けた?毒が消えた?その後のキャリアは燻っておりますが、まだまだ期待しております。

そんな彼のTシャツを作ったよ!イメージはメキシコの観光客向け雑貨屋で売ってそうな安っぽい海賊版Tシャツ。写真を加工してイラスト化したのに本人を似ていないのも海賊版ぽくて気に入ってるぞ!

人気者兼憎まれっ子でも世界の主役。カネロ

サウル・カネロ・アルバレス。カネロは「赤毛」て意味で、赤毛のアン的に言うと、カネロのサウル。メイウェザーとパッキャオ後の現ボクシング界の顔です。一番稼ぎます。でもやりたい放題です。彼に対する批判はそのまま彼の人気と影響力の大きさを示している。ちなみにワイは好きではない。
そもそも10代半ばで天才と話題になり(プロのトップと分の良いスパー動画とかあったな)、天才的な防御感とカウンターセンスは当初から際立っており、あっという間に20歳でスーパーウェルター級の世界王座獲得。

ビボルに負けても相変わらず主役。憎まれっ子でも主役。カネロ

メイウェザーとの新旧スター対決は盛り上がりましたな。しかし試合は(どうしたカネロ?)な蛇に睨まれたカエル状態で完敗(でも判定は2-1)。
この試合、カネロですら、「どこにどう手を出してもカウンター取られそうで萎縮」していた。これが世界頂点のプレッシャーとカウンター。でもこの痛い一敗で高すぎる授業料を払い、逆にカネロは以降の対戦相手に「どこにどう手を出してもカウンター取られそうで萎縮」させる展開で王朝を築く。

階級を上げ続け4階級制覇する頃には(階級を上げているのに)頑健な体とパワー増した強打で誰も手がつけられない(GGG初戦はGGGの勝ちと見たけどドロー)状態。この辺色々おクスリ疑惑もあるけど、ボクシング界の顔には関係ないわ!
が、22年5月にドミトリー・ビボルのライトヘビー級タイトルに挑むも、こりゃ忖度しようのない判定負け(何故か僅差だったけど)。

でも、その後も好き勝手にやってるよ!ボクシング界の顔だもん!

色々嫌いな部分はあるけど、強い選手で強い相手と戦い続けている事は事実なんですよね。そして今後の彼の動きにも注目せざるを得ない。

そしてまだまだメキシコの覇権は続く…

それでもまだままだ言い尽くせないメヒコ。多くの日本人にとって「サボテン?タコス?アメリカに不法移民が多い?」てイメージの国かもだが、我々ボクヲタにとっちゃ憧れの最重要国!(近年はメヒコ判定とか揶揄されるが、そんなんどこの国でもあるやんね?)


という訳で、それではまた!

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