世界拳闘紀行 第十一回 メキシコ 第三夜(00年代以降1)

WORLD BOXING JOURNEY

文:コビトロック
イラスト:kimura

バレラ、マルケス、モラレス
現在もボクシング大国、間接的にアメリカだってメキシカンボクサー大国かも

第11回メキシコ2000年代以降。メキシコって延々名ボクサーを輩出するボクシング大国。さらにメキシコ系という括りでラティーノアメリカンまで含めるととんでもない事になりますね。もうアメリカでは黒人よりラテン系の方が人口は多いし、何十年か後には移民も混血も進んで白人を抜くらしい。
何が言いたいかっていうと、米国ボクシング人気を支えるメキシコ系が増えればボクシング人気ももっと高まりませんかね?ていう短絡的な発想…。もっと盛り上がれボクシング!

無冠の帝王!マルケス

卓越した技能とスタミナに劫火の如き闘志!何より天才的なカウンターセンス!およそボクサーに必要なものをコンプリートしているかのような理想的な戦士、それがファン・マヌエル・マルケス!ですよね?よね?
実際には90年代前半にデビューしていたけど、長らく無冠の帝王。そもそもデビューも、リンゴを獲ろうと登った木から落ちて背骨大怪我して2年遅れたってマジ?
でデビュー戦も圧倒しながら反則負けにされたって…。その後勝ち続けて指名挑戦者になってもハメドは戦ってくんねーし。ようやくフレディ・ノーウッドに挑戦して圧倒しても、謎の判定負け。20世紀版エマニュエル・ロドリゲス状態。いや寧ろロドリゲスが令和のマルケス状態?
名伯楽ナチョ・ベリスタインの最高傑作と言われながら王座についたのはようやく03年。

強敵と書いて(とも)と読む。パッキャオとの4戦

翌年には運命のライバル、パッキャオとの邂逅。初戦は初回に3度のダウンを奪われながら(3ノックダウンシステムなら負けてた)、盛り返しドロー。4年後の再戦もまたダウンを奪われながら盛り返し1-2の判定負け。3年半後の再々戦はダウンはないもののまたも接戦の末0-2判定負け。
ここで諦めないのがマル兄!そこに痺れる憧れるぅ!とはならずに、大方のファンの印象は(飽き気味…ジジイになるまでこのシリーズ続けるの?)てな印象だが、試合は6回に100年に一度レベルの衝撃カウンター失神KO勝ち!いや〜この試合、パッキャオ応援しながら観てたので負けてショック!でも凄いKO観れた!の感動もあって感情ぐちゃぐちゃでした。でも悲願達成良かったね、マル兄!

マルケスこぼれ話

知人に元日本ランク1位の元選手がいるのですが、90年代半ばに彼にマルケスサイドから「日本まで行くから試合してくれへん?」てオファーあったらしい。王者ではないものの無冠の帝王だという異名は日本まで轟いていたので「やる訳ないやろ!」て即答で断ったらしい。本人曰く、引退へ気持ちが傾いていた事もあったし。


……
………おいっ!受けろよっ!君が受けていたら、日本のファンは生マルケスを拝めたんやぞ!パッキャオとやった寺田新みたいにその名は濃く刻まれたはずだぞ!
などと、その話を聴いて無責任に思いました。ファンは鬼ですな。ごめん。

赤ちゃん顔の暗殺者

マルケスとは違い、89年に15歳でデビュー、95年には順調に王者なったのが、マルコ・アントニオ・バレラ。ベヒーフェイスアサシンってニックネーム、他のボクサーでも時々見かけるけどこの人俺は以外は認めん!
スーパーバンタム級絶対王者として君臨(ジュニア・ジョーンズに2連敗したけど)したけれど、それよりも当時絶大な人気を誇ったナジーム・ハメドとの対戦がハイライトか。
スーパースターなるも、ガードをしない型破りスタイルや相手を小馬鹿にしたような態度にアンチも多かった無敗のハメド。もうとんでもない熱気の中、バレラと対戦。正統派ではハメドを崩すのは難しい?かと思ったが、超正統派攻撃的メキシカンスタイルのバレラが圧倒。12回判定勝ち(秘かにIBO王座決定戦)。ハメドはこの敗戦で引退。

この人もパックマンにパクパク…

ハメドに勝利がこの選手のハイライトかと思うのだが、パッキャオとの戦いもやはり運命だったのだろう。03年に何か階級下のイキの良いアジア人とやってみました(オッズも4-1でバレラ有利)て感じだったのだが…。初回にダウンを奪うも、徐々に盛り返され衝撃の11回TKO負け。パッキャオの真の世界デビューのアシストした感じに。
でもね、この試合バレラは過去の脳切開手術の影響で体調万全じゃなかったのよ…などと言うのも彼の誇りを傷つけそうなので言わな〜い。
07年にパッキャオと再戦するも判定負け。
因みに帝拳ジムの田中繊大トレーナーが名を一気に上げたのもバレラのチーフトレーナーやってからですよね。

恐怖!恐怖の男!

エル・テリブレ。エリック・モラレス!97年に歴戦の勇士サラゴサちゃんに11回TKO勝ちで引導を渡しWBCスーパーバンタム級王者に。その後、メキシコ人としては2人目の4階級制覇を達成する(一人目はホルヘ・アルセ)。
あの印象的な眉毛。あの眉毛で心の弱いファイターな訳がない顔してる。あの眉毛でパンチの弱いファイターな訳がない顔してる。まず顔が好き。あるやん好みのボクサー顔って。それ。

恐怖の男も諦めの境地にさせる恐怖の男!

そんなモラレスもパッキャオには1勝2敗。どうしてもこの00年代ってのはメキシコメインの話しててもパッキャオに絡まざるを得ない。それほどこの3人はスーパースターであり、この全員と戦い尽くしたパッキャオも彼らとの戦いを通しスーパースターになったので。
初戦は際どく勝ったものの、再戦では10回TKO負け。そしてラバーマッチでは完全に勢いの差が出たのか、序盤に猛攻をかけるも逆襲され3度のダウンを奪われTKO負け。3度目のダウンの際の驚いた様な諦めた様な表情が印象的でした。
この流れを通して改めて思うのは、井上尚弥にメキシカンのスター選手ライバルが、3人と贅沢な事は言いません、1人でもいてくれたら。そう思うのです。それくらいパッキャオはライバルに恵まれていたし、パッキャオ抜きでもこの3人が同じ時代にいたのは奇跡。

三国志。三つ巴。

この三人衆、互いにライバル。バレラとモラレスが計3度やってます。憎くないけど盛り上げる為のトラッシュトークどころか、記者会見の時点でパンチの応酬する仲の悪さ。そういうのって案外試合は塩になりがちだが、歴史にクラシックとして刻まれる超絶激闘。2000年ファイト・オブ・ジ・イヤーに。モラレス2-1判定勝利も物議をかもす。2002年の再戦は高度な技術戦に。ここで僅差で今度はバレラ勝利。3度目は初戦みたいな激闘の末にまたも僅差2-0でバレラ。2004年ファイト・オブ・ジ・イヤーに。平成の名勝負数え歌ですね。今は仲良しって言われるけどホンマかな?
で、バレラはマルケスと07年に激突。これまたお互いの持ち味発揮の名勝負の末にマルケス判定勝ち。
じゃ、残るマルケス×モラレスは…?機運はあったものの実現しなかったんですよねぇ…観たかった。ちなみにモラレスは俺はやりたかったけどあっちが逃げた。みたいな事を言うてますが、ビジネスですもん簡単には決まりません。もしやってれば…筆者の予想はマルケスの判定勝ち。かな。(2020年頃にエキシビジョンで対決する案あったけど、あれどうなったんやろ…ま、やっててもエキシなんでお遊びの域は出ませんわな)

そんなマルケスをTシャツにしない訳にはいかないでしょ!

この3人全員好き。あなたは誰推し?あたいはマルケス推し!
で、いつものようにTシャツを作ろうと思い立ったのですが、もうカッコイイのよりヘンテコなの作りたくなっちまいやして、間の抜けたデフォルトイラストとカタカナのセットで、80年代原宿タレントショップ(若い人は知らないでしょうが、ビートたけし、とんねるず、山田邦子等々売れてる人は大概グッズショップを出してたの)で売ってそうなダサいTシャツって感じで。
80年代風なら当時流行ったネオンサイン画像も作ったが、こっちは80sリバイバルが浸透してそんなに古臭い感じじゃないっすね。

ファン・マヌエル・マルケス
ファン・マヌエル・マルケス
ごめんなさいまだメキシコ編続くわ…

あっか〜ん〜!今回でメキシコ終わりにしようかと思ってけど、収まらへんかった!仕方がないので、次回こそはメヒコ編最終夜00年代〜その2で好き勝手に語ろう。


という訳で、それではまた!

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