本の方舟 第五回
「ハッピードリンクショップ  Happy Drink Shop」

ページを開けて、言葉と言葉を繋ぐと、
知らない世界の扉が開く。
行きたい所へ、いつでも行ける。

第五回 
写真・文/吉村和敏
「ハッピードリンクショップ  Happy Drink Shop」
フォトセレクトブックス
サイズ 縦210mm 横282mm 98ページ
税込価格 3,960円

表紙

こりゃ! とんでもない写真集が発行された~(笑)。

 あの「最も美しい村」シリーズの写真家・吉村和敏さんが「とんでも!?(失礼)」写真集を発表した。昨今、写真家が独自のアングルで切り込み、表現する「びっくりモチーフ(笑)」が多い。

 長野、山梨、群馬、神奈川、4県にまたがり1,044ヶ所もある自販機ショップ「ハッピードリンクショップ 」、三年と六ヶ月の歳月をかけ撮影踏破! いよいよ吉村さんもキワモノに手を出したかと思いきや! モチーフの「自動販売機」に目が奪われがちになるのだが、背景から読み取れる文脈を感じるとなかなか奥が深い~(私なりにだが・笑)。

ページを開けば「なんだ!こりゃ!」と思ってしまう(笑)。

写真を見れば、しみじみ思う日本のありがたさ

 そのひとつは、とにかく「日本は平和で安全」てこと、世界のカントリーサイドを多く巡った吉村さんならではの隠れたメッセージを感じた(勝手にだけど・笑)。

 旅好きの方なら分かると思いますが、海外にほぼ自動販売機は存在しないことです(私が巡ってきた北米、オセアニア、中米、カリブ、アジアでは見かけなかった)。例外で言えば空港のトランジットルームにドリンクの販売機、ホテルロビーの共同トイレにコスメ類に衛生グッズなどがあったくらいです。「なぜ」海外には自販機がないのか? それは簡単なこと、盗まれるからです! それも自販機ごと跡形もなく(苦笑)。

 人通りの少なそうな場所に何台も自販機が並んでいる「ハッピードリンクショップ」、これを眺めているとつくづく日本は治安が良い国だと思える。

コーヒー牛乳を買う少年、車にはお母さんが待っている。ちょっとした光景に平和さを感じる。
富士山を借景! なんて贅沢な「ハッピードリンクショップ」だ。

情緒を感じる風景に、さすがだな!と笑ってしまう。

 それに、もうひとは「過疎化や高齢化、少子化」の問題。ページをめくっていくと、いくつか写真に共通点を見出すことができた。それは、商店の入り口を塞ぐように並んだ自販機の絵面だ。ひと昔前までは「よろず屋(生活雑貨・食料品・文具・嗜好品・薬などを扱う商店)」を営んでいた佇まい。

 バス停前の「よろず屋」でアイスを食べてるクラブ終わりの高校生、店前の床几に腰掛け井戸端会議に花咲くお婆さんたち、農作業帰りのおじさんが晩酌のお酒を買っている姿、小学生の体操服を注文しているお母さん・・・。そんな、懐かしくも温かい日常の風景が浮かんでくる。その風景は失われたけど、その代わり「ハッピードリンクショップ」を舞台にして、また新しい日常がそこには展開しているはずだ。

 これは「とんでも」写真集などでない! ちゃんと心象風景を見せてくれる写真集。何を感じるか? 試しにページを開いて欲しい一冊。

「よろず屋」さんから「ハッピードリンクショップ・ミニ」に変わったのか?
それを見ている二宮尊徳さん(笑)。
後書きには「ハッピードリンクショップ」の概念がちゃんと語られている。三年半、1044店舗踏破、ご苦労様です。
裏表紙の一枚は、雪に埋もれる自販機・・・取り出し口が埋まっています。さど良く冷えているんだろうな(笑)。

 
 
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https://www.amazon.co.jp/ハッピードリンクショップ-Happy-Drink-吉村-和敏/dp/4991122848

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