世界拳闘紀行 第一回 イギリス

WORLD BOXING JOURNEY

文:コビトロック
イラスト:Kimura

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「ボクシングが人生に似ているのではない。人生がボクシングに似ているのだ」

 格闘技が好き。中でもボクシングはかれこれ30年以上観続けている。ボクシングの何にそこまで魅了されんねんやろ? 心技体全てを結集した大逆転もあれば、序盤で完膚なきまでに叩きのめされる事もある、その勝者と敗者のコントラスト。または1戦の重みが他のスポーツに比べて重すぎるゆえの緊張感。更には手しか使えない不自由さゆえのシンプルかつ奥深い攻防。その他諸々あれど、突き詰めれば選手の人間性が全人格が曝け出されるから惹かれるのだ。嘘がつけないのだ。よって冒頭の格言がボクシングの魅力を全て語っているように思う。

 今回ページをいただくにあたり大好きなボクシングについて書き散らし倒して可。ということなのだが、「ソノひびヨリ」は旅のデジタルマガジン。なのでなかば強引に世界紀行的なノリで世界各国のボクシングを紹介する方向で行きま〜す。(途中から好きな選手や試合を独断で語るだけになると思うけど)
 

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歴史と伝統、誇り高きイギリスのボクサー

 で第一回の今回は近代ボクシング発祥の地「イギリス(UK)」! その始まりは…元々蹴りや投げや噛み付き(!)有りだったボクシング(それってMMAより更に何でもありやん)。そこから19世紀に1ラウンド3分制、グローブ着用、蹴り・投げ禁止、などを定めた「クイーンズベリー・ルール」が定められ、ぐっと今のボクシングに近づいたそうで、ここからが近代ボクシングとされている(らしい)。
 ボクシング発祥の地という歴史を英国のボクサー達は意識していなくても、その伝統は彼らの遺伝子にしっかり組み込まれている。基本に忠実な攻防兼備で高い技術と闘争心を見事に併せ持つ選手が多いのが特徴。その一方で、移民文化も盛んなお国柄を反映して型破りな選手も次々生み出して来た。紳士の国であり公私ともにジェントルメンな選手がいる一方、またやらかしたんかい…と、良くいえば破天荒な選手も多い。選手の多様性を受けいれる土壌は豊かだ。

個性豊かなUKボクサー達

 代表的な選手をあげていくと、まず最初に言及されるべきは100年以上前に世界初の三階級制覇(ミドル→ヘビー→ライトヘビー)を成し遂げたボブ・フィッシモンズだろう。皆さん、鳩尾(みぞおち←こんな漢字なのね)にまともにパンチ食らった事ありますか? ある人もない人もこのボブの遠い被害者であり加害者。最悪ですよね。あれ、痛いし苦しいし呼吸出来ないし。なんとこの鳩尾パンチ(ソーラー・プレクサス・ブロー)をボクシング最初に必殺技とした選手だそうで。ホンマかいな。
 

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60年代〜70年代:ケン・ブキャナン繋がりでガッツ石松を想う

時代は一気に飛んで60年代、王者としては短命に終わったハワード・ウィンストンは何と右手指3本を事故で失っていたが、左に磨きをかけてタイトル獲ったという。

70年代にはスコットランド出身のケン・ブキャナンが活躍(トランクスがタータンチェックの選手って他に記憶がない。オサレ)。かの石の拳ロベルトデュランとも激闘を演じたこの名選手に勝利したことで、ガッツ石松は世界的な評価をあげたのではないだろうか?

90年代〜00年代:皆大好きハメドとレノックス・ルイス

90年代に一大旋風を巻き起こしたのがナジーム・ハメド。今でも彼をフェイバリットに上げる人が多い。クネクネウネウネパンチをかわしながら、いきなり飛び込み強打を放つセオリー無視の超独特スタイルは漫画「はじめの一歩」に登場するブライアン・ホークの元ネタになり、伝説の総合格闘家山本KIDの打撃スタイルにも影響を与えている。

忘れてはいけないのがヘビー級で一時代を築いたレノックス・ルイス(カナダ育ちだけど)。日本ではタイソンやホリフィールドに人気・知名度で劣る気はするが、両者に勝利している。最強と思いきや稀に格下にスカ負けしちゃうのも絶妙な魅力?

00年代では驚異的な突進力(どすこい!)を武器に一時代を築いたリッキー・ハットン(メイウェザーとパッキャオに派手にKOされるシーンばかり取り上げられるイメージだけど、当時めちゃ強かったから!)や地味強代表ジョー・カルザゲの存在も忘れちゃなるめぇ。
 

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2010年代以降:大英帝国の熱は続くよどこまでも

10年代に入ると次々と世界王者が生まれボクシング人気が加熱、特にカール・フロッチとジョージ・グローブスの英国人同士の2連戦は遠い日本からすると(スーパースターじゃない人同士の対戦で異常に盛り上がっとんなぁ)という印象を受ける程現地ではお祭り騒ぎだった。

そして現在(2021年3月)に目を移すと、アンソニー・ジョシュアにタイソン・フューリーの両ヘビー級王者を擁し、軽量級から最重量級までまんべんなく王者が存在する英国は何度目かの最盛期を迎えていると言っても過言ではないだろう。この人気加熱ぶりを観るとまだ暫くはこの隆盛は続きそうだ。

国の数だけ個性はある。だから面白い。

あのイギリスのファン特有の、サッカーの試合と錯覚するかのような大合唱。そして(お前らちゃんと試合観てんの? 誰と誰が試合やってようと、ただただ自分が盛り上がりたいだけちゃうんけ!?)と訝しんでしまうほどの熱狂ぶり。観戦スタイルにお国柄が一番出てまう国ちゃうかな?そしてそういう試合外の部分も含めてボクシングを楽しめれば、世界中どの国の試合も興味が尽きないのである。

あぁ〜あの選手もあの試合もいっぱい語りたかったのに漏れた…。国で分けて連載してくの無理あるかな? まぁええや。次回も楽しも。それでは!
 
 
 

Special Thanks!
写真提供:横見浩士(Mindbenders&Classics)

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