ページを開けて、言葉と言葉を繋ぐと、
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第二回
椎名誠著「わしらは怪しい探検隊」
角川文庫
今回、紹介する本は「読むべきか」「読まざるべきか」どちらでもいい(笑)一冊なのですが・・・。私にとっては、大切な青春期の思い出に残る『痛快血眼ドタバタ暴力的男だけの天幕生活』が、描かれた初期のシーナ的文学(スーパーエッセイ)怪探シリーズの記念すべき第一作目『わしらは怪しい探検隊』を紹介。
この本が刊行された昭和五〇年後期は、バブル期の夜明け前といえる「キンキラピカピカお立ち台ヒラヒラ」の時代。そんな時代に逆行するかのように、むさ苦しい男たちがテント・鍋を担いで、小さな島で数日間(地獄のような)天幕生活の記録を綴った探険記? なのだ。
ここに登場する人物は、自伝的私小説『哀愁の町に霧が降るのだ』の舞台「克美荘」で共同生活をしていた主要メンバーがほぼ登場する。有名どころでは「ワニ目画伯ことイラストレーターの沢野ひとし」「人情弁護士こと木村晋介」「元・本の雑誌編集長こと目黒考二」など、馴染みの人物が登場するのが嬉しい。
本の内容といえば、若かりし日のシーナが結成した、「東日本何でもケトばす会」を腕力(笑)で統率し。夜な夜な沢野氏が作る、怪しい闇鍋で焚き火を囲み。ひたすらビールを呑み、酔っぱらえば、木村せんせいが即興デタラメ民謡を歌い出す。何んの生産性もなく、一週間を浜辺でダラダラ過ごした事を書き綴っただけなのだ!
だが、さすがは作家シーナさん! 年に一度のこの天幕生活を『青少年強化合宿』と称して、自らガリ版で「旅のパンフ」を刷る。その中の記事、参加者プロフィールは全て彼が書き、参加者(隊員)全員に配る。なんて、うらやましい!(目黒さんは、その現物を今でも保存しているみたいだ)。
なぜ? 「旅のパンフ」のツアータイトルが『青少年強化合宿』なのか。シーナ隊長を含めた隊員の平均年齢は、二〇代中頃だろう。千歩譲って、青年はわかる、では『少年』て・・・。そこは摩訶不思議、一〇数人のおっさんの中に混じって、ただ一人、小学六年生の少年『フジケン』が参加している。このキャラクターが、全編に渡りいい味を出している。同世代の男たちが「どこかにキャンプにいく」ってだけの話ではなく、家族でもないのに子供が参加している?! そこが、シーナワールド全開で面白い!! 一味違うアウトドアエッセイになっている。
今、またアウトドアがブームになってきている。このコロナ禍の中では『ソロキャンプ』が流行っりだしている。もちろん、一人でしっぽりと気ままなキャンプもいいが、大勢でドカドカ行くキャンプもやはり楽しい。いや、苦しいことの方が多いかもしれないが(笑)。
コロナが終息すれば、久しぶりに、みんなに声をかけて行ってみたくなった。 最後にもう一度、言っておこう。「読むか」「読まないか」はどちらでもいい(笑)。
「あやしい探検隊」シリーズは、この一冊から始まった。
その後、13冊もシリーズとして続いている、
至極の野外天幕焚き火エッセイ。
※表紙カバーは大人の事情でお見せできません。残念ですが・・・
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わしらは怪しい探検隊 角川文庫