ありがとうタンタン 神戸市立王子動物園編
文・写真 やまんなかタヌキ
タンタン(旦旦)メス・24歳
神戸のお嬢様タンタン
タンタンのチャームポイントは、何といっても小さな体に手足の短さと、人間のように座って「食事」をする様子だ。通常パンダが竹を食べる時、パンダ座りと呼ばれる、腰で座るような寝そべった態勢になるが、タンタンはというと、まるで人間のようにお尻で座って食べる。上品そうに食事をするその姿から、ついたあだ名が「神戸のお嬢さま」だ。普通のパンダより「ん?短め?」と思える手足を上手に使って、美味しそうな咀嚼音を出しながら竹を食べる姿はエンドレスで見ていたいと思える可愛さだ。
ムシャムシャムシャ。食べるのに一生懸命
ありがとうタンタン
2020年11月5日。今日もタンタンの前は人だかり。タンタンはご機嫌な表情で竹を食べて、ゴロゴロと可愛い姿を見せてくれた。園の出口付近には、タンタンへのお別れメッセージ用のカードが設置され、来園者が自由に投稿できる。お土産品にも「ありがとうタンタン」の文言が多く、タンタンの帰国が近いことを実感し、今更ながら「どうにかならないのかなぁ」という気持ちが溢れた。
しかし、考えてみるとそんなことは勝手な思いで、タンタンファーストで考えるとそれが一番なのかもしれない。タンタンが暮らすであろう四川省の施設は、広大な自然の中にあり、晩年期を迎えたパンダたちが大切にケアされて幸せに暮らしているようだ。施設にはパンダ専用の病院もあり、安心して余生を過ごせる。一般の人も見学できるようで、これからもタンタンにも会うことができるらしい。
とは思いながらも、2021年、タンタンの26回目の誕生日、王子動物園では祝えないものかな・・・
タンタン、長い間ありがとう!
生まれ故郷で快適に過ごせると良いね。コロナが収まったら、新しい場所でもきっと多くの日本語が聞こえてくるはず。その時は長く暮らした神戸を思い出して、タンタンスマイルを見せてね。
大好きだよ!! ずっ〜と、ずっ〜と、ありがとう!!
そして、さよなら。元気でね。
進化が育んだパンダの可愛さ
パンダの歴史は長い。遺伝子の情報では、2千万年前にクマから分岐したという説がある。それまでは肉食だったが、竹や笹を食べる草食に転換し生存競争の少ない生き方を選んだのだ。
パンダの体には竹や笹は栄養の吸収効率が悪く、2割程度しか消化できないから、1日に20キロもの竹や笹を食べなければならない。それでもパンダが生きる場所に選んだ山深い竹林は、天敵も少なく、竹は年中あるから食料の心配なく生きられる。
人間の歴史より古くから、争いのないのんびりした生き方を続けてきたパンダを知ると、筋金入りの可愛さも腑に落ちる。
神戸市立王子動物園