ソノひびヨリ
2025年 8月20日

大阪南・なんばから30分で行ける、南大阪の奥座敷。半日観光に最適。
大阪・関西万博が閉幕して早くも二ヶ月、秋も深まり観光シーズンの到来・・・と行きたいところだけど「万博ロス」で(笑)大阪への観光客が減少気味・・・。そんな時こそここで大阪の魅力を紹介したい、「万博ロス」などを乗り越えて~!
大阪市内の宿泊施設が多く集まる「南」エリアから、南海高野線「なんば」から急行に乗れば30分弱で到着できる、ちょっとレアな南河内エリアの半日観光に最適なスポットを紹介します。

下・駅前のローター、この駅には南海と近鉄が乗り入れている。奥座敷と言っても便利な所なんだと感心です。
南海高野線「なんば」から急行(乗車時間28分)に乗れば6駅で「河内長野」に到着、ホテルをチェックアウトしてからでも充分余裕があります! 大きな手荷物などあれば「なんば駅」のコインロッカーに預けるのがオススメです。
河内長野駅舎から出ればロータリーを囲むように立体歩道があり、ショッピングモールにも連絡しています。その歩道の西側の階段を降りれば「世界遺産・高野山」まで続く「高野街道」に入ります。今回の旅の目的、「大阪の食」と「日本酒」それに「文化財」を楽しむ旅の始まりです。

目的地まで徒歩約5分の間、「高野街道」を楽しんでみましょう。この道には普通の民家と思われる軒先に、「杉玉」や「高野街道」と記された「灯籠」があちこちに飾られている。観光資源を地域で後押ししている様子が伺えて、何か嬉しくなってくる道ですよ。街道の路面にも街道名入りブロックがはめてあり、これなら迷う心配がない親切な町でもありますね。
そんな街道筋の町並みを楽しんでいれば、あっ!という間に本日の目的地「天野酒・西條合資会社」さん「酒蔵ダイニング・大阪産料理 天空」に着いてしまいました(早っ)。

国の有形文化財の建造物が酒蔵ダイニング!?

この「酒蔵ダイニング・大阪産料理 天空」の店舗(建造物)は国の有形文化財で、「高野街道」面した酒蔵の旧店舗・主屋と土蔵だった、建造年は幕末から明治初期と考えられていて、左右の店幅はなんと「11間(けん)」。「1間」が約1.8mだから、20mもあるのです、これを大店(おおだな)というのでようね。それもそのはず、この西條合資会社さんの酒造りの創業は、江戸時代中期の1718年(享保3年)、その歴史は約300年なんですって!
そんな長い歴史の残穢を感じつつ暖簾をくぐると、土間が広がり現在はカウンター席として使われています(お客さんが食事中でしたので撮影ができず残念)。その奥も土間が続き「待合席」になっていて、大きなカマド「へっついさん」が残っています。カマドの対面には二階にあがる段梯子があり、昔は蔵人たちが部屋に使っていたのだと思います。

下・昭和時代の銘柄「波之鶴」の広告看板。むかしはこのタイプの看板、多かったですよね! 醤油や蚊取り線香、オロナミンCなど(笑)。

その場でしばらく見学しつつ待っていると、予約の時間が来て座敷に案内されました。(ここで注意です、現在、ランチは完全予約制になっています。行く時は必ず予約してくださいね。)
小上がりを上がり座敷に案内されると、中庭からの採光を取り入れた明るいお部屋にテーブル席が並んでいる。ふた部屋で40席ほどあったと思う・・・。隣とのテーブル間の距離も広くとってあり、ゆったりと食事を楽しめる空間になっていた。「お好きなお席にどうぞ」と言っていただいたので、悩んだ挙句に所間の前にさせて頂いきました。今から頂く、お酒と料理に胸膨らませ待つことにします。


写真には写っていませんが欄間の彫りが時代を感じさせてくれます。

建造物に歴史あり、天野酒にも歴史ロマンがあった!?
さてここは酒蔵ダイニング! 昼から呑んでも罪悪感なし! 料理がくる前にお酒の注文をします~(笑)。卓上のメニューには色んな種類のお酒が載っている、一般的なものからプレミアムなお酒もある。色々と迷ってしまいます、そんな時には本誌の「一合一肴」さんを真似て「天野酒・本醸造」ぬる燗で一献ですね。
料理前に出してもらったお酒の徳利とお猪口には、昭和時代に醸造していたお酒「波之鶴」の銘柄が印字されているけど・・・? 今は醸造されていない、現在は「天野酒」だけみたいだけど? なぜ、「波之鶴」から「天野酒」に醸造を切り替えたのだろう、なんとなく不思議に思い調べてみた。そこには蔵元さんの情熱と歴史に挑戦するロマンが見えてきた~。
はじめに「天野酒」の歴史を話しておきましょう。この「天野酒」の歴史は古く、蔵元が創業した江戸より昔、なんと安土桃山(織豊)時代までさかのぼります。この銘柄「天野酒」の発祥は、ここより約5.5kmほどにある古刹、開山1300年の歴史を誇る「天野山金剛寺」なのです。この「天野山金剛寺」は、南北朝時代の南朝の「後村上天皇」が5年間お暮らしになった「行宮」跡もあり、なんと国宝を5つも保有している由緒正しきお寺なのです(笑)。そんな、すごいお寺で「僧坊酒」として造られたのが「天野酒」、太閤さんこと「豊臣秀吉」にも愛飲され、多くの武将にも愛されたお酒のようです。そんなお酒が、江戸前期に幕府の寺院統制の強まったことで、突如と醸造できなくなり「幻の酒」となってしまったのです。
時代は流れ流れて、高度成長期の昭和46年(1971年)に当時の「天野山金剛寺」座主の協力の上、九代蔵元(先代蔵元)が「天野酒」を復活させたのです。その醸造法(製造工程)を記した資料もなく、古い文献から読み取り試行錯誤を繰り返し造り上げた情熱の賜物のお酒なのです。「天野酒」の中には、その情熱と歴史ロマンが溶け込んでいる様に見えます、澱のように。


下・大阪産食材の前菜プレート
そんな歴史に感心していると、待ちに待った料理が出て来ました! ここで「酒蔵ダイニング・大阪産料理 天空」で使われる食材の説明も。使用されている食材は、基本「大阪産(もん)」、季節により旬の食材を活かした料理が食べられます。大阪グルメを楽しみたい方にはうってつけ、一石二鳥ならぬ「大阪もん」を一網打尽できるお店なのです!!
ミニコースのスタートは古代米を使った食前酒「天野酒・甘酒」から、甘味が爽やかなデザート酒のような感じで飲みやすく、お酒がダメな方もノンアルコールなので安心ですよ。食前酒と共にサーブされたのが「前菜プレート」、六種盛りの内容は(写真参考に向かって左から順に紹介)「ゴーヤと茗荷ピクルス、鮭の南蛮漬け、泉州水茄子と無花果カプレーゼ風、青紅葉麩、焼きナスゼリー寄せ、よもぎ麩田楽」どれもお酒に合いますね。美味しい料理を味わい、お酒を一献、また摘み、また一献と、ゆっくり時間を楽しむことができます。気づけば徳利が空に、ここでもう一合追加(笑)。
そうしている内に料理はメインへ。メイン料理は牛・豚・鶏料理から選ぶことができ、ほろ酔いの頭で悩んだ末に「牛肉のグリル赤ワインソース」にしました。メインには、もちろん、ご飯とお味噌汁が付いてきます、そこに「天野酒のネギ味噌」がついてきた。一口食べるとこの「ネギ味噌」絶品なのです! ご飯のお供にも、酒の肴にも相性が良く、とにかく旨い~! もう一合をたのみかけましたが、ここはグッ~と我慢しました(お昼から三合はさすがに・苦笑)。
最後は食後のデザートとコーヒーか紅茶、これで税込3300円、大阪もんを楽しめるし有形文化財にも触れ合うことができる、お得なミニコースランチですよ。


下・本日のデザート、これもお酒に合うのです。

「酒かす入り焼きねぎ味噌」を購入、宅呑みの肴に!
ランチの後は観光へ、南北朝時代の古刹へ歴史探訪。
お腹も膨れ、ほろ酔でいい気分、ここで近隣の観光を紹介しておきます。先のど話した「天野酒」が造られていた「天野山金剛寺」には、河内長野駅前より南海バス・4番乗り場より約23分(天野山で下車)、駅前の観光案内所で電動アシスト付自転車を借りれば約25分(料金 4時間・500円、1日・1000円)。健脚で時間がある方なら「日本遺産」の「天野街道」を歩いて行くもオススメです(天空から約5.5km、約1時間20分)、秋は紅葉が美しく、春には桜が咲き、より国宝を彩ってくれます! 国宝以外にも国の重要文化財もあり見所満点な古刹です。

下・後村上天皇が、政務を執り「月を愛で、心を慰めた」と言われる「観月亭」

もう一箇所、やはり南北朝時代の南朝ゆかりの古刹「観心寺」。ここには南北朝時代のヒーロー「楠木正成」の「首塚」や「後村上天皇」が暮らした「観心寺行宮」跡と天皇陵「檜尾陵」があり、南朝と関わりの深いお寺なのです。もちろん、国宝も三つあり、国の重要文化財も数えきれない数を保有されています。
これからの時期は紅葉が見所で、春から夏にかけては深緑の木々が美しい場所です。ここに来られたら『えっ! ここ大阪?」て思ってしまうかもしれませんね(笑)。アクセスは河内長野駅前より南海バスで約12分(観心寺で下車)、「天空」より自転車で約20分。徒歩なら約3.6km、約55分です。
どちらの古刹もランチを取ってからでも、充分、ゆっくり観光できますよ。どうですか、大阪もんの美味しい食事をいただき、文化財を楽しみ、自然の中で歴史に触れ合う半日の旅を~。大阪の隠れた魅力を発見できるかもしれませんね。

下・国宝の「金堂」


天野山金剛寺HP
観心寺HP
河内長野から天空、金剛寺
河内長野から天空、観心寺

