第二七話 福岡県北九州市 門司港レトロ
『名建築をひたすら巡る旅になった、門司港レトロ』 前編

ソノひびヨリ

2023年 5月

門司港レトロ
夜になれば幻想的にライトアップする「門司港レトロ」
駅を降りれば、「名建築」の宝庫『門司港レトロ』
門司港レトロ
さぁ、どこから周るか。やはり駅近からかな。

 今回の旅のテーマは「名建築」、とにかくウロウロせずに1エリアで「名建築」を鑑賞したい、そんな物臭にちょうどいい『門司港レトロ』だ。

 ここ北九州市・門司港は中世から近代(昭和初期)まで、本州から九州への玄関口で日本とアジアのgatewayだった所。だから、アジアから船で輸送されてきたバナナを露天で売る「バナナの叩き売り」の発祥の地でもあるんです。当時ハイカラだった街、現在は『門司港レトロ』として明治・大正・昭和の名建築物を残す観光スポット、そんな港街を歩いてみた。

門司港駅
リニューアル前の「門司港駅」、このレトロ感がたまらなく良かった! 撮影時間は朝。

 名建築の散策は「門司港駅(国の重要文化財)」からの出発だ。この駅は1914年(大正3年)に2代目の駅舎として完成した、木造2階建ての西洋風建築。現在の駅舎はこの駅(写真時)をベースにリニューアル(2012年より大補修が始まり、2019年に補修完了)され美しく生まれ変わっている。個人的に昔の駅の方が旅情感があり好きだった。 まぁ、そんなこんなで歩いていれば、駅から約2分で「旧門司三井倶楽部」に到着。

 「旧門司三井倶楽部」も国の重要文化財で、三井物産の社交倶楽部として1921年(大正10年)に作られた。建築様式はハーフティンバー様式、木造の骨組みを漆喰やレンガで完全に埋めず、表面を残して外観をデザインしている様式なのです。館内にも入館でき、2階にはアインシュタイン博士が1921年来日の時に宿泊した「アインシュタインメモリアルルーム」がある。「放浪記」で有名な「林芙美子記念室」も併設。この2部屋の見学には、大人150円の料金が必要。その他の部屋は無料で見られる。※2023年3月まで工事の為休館していたので調べてくださいね。

 外観はキレイに化粧なおしされていて味気なさを感じたけど、館内に入ればその時代を感じることのできる名建築物だった。

旧門司三井倶楽部
外観は大きなモデルハウスみたいだ。神戸の異人館街にありそうですね。
旧門司三井倶楽部
旧門司三井倶楽部
アインシュタイン博士が宿泊した「アインシュタインメモリアルルーム」。

 次に訪れたのは「旧門司三井倶楽部」から同じく約2分にある「旧大阪商船」。大阪商船は1884年(明治17年)に設立された海運会社で、門司支店として使われていたのがこの建物。1917年(大正6年)に竣工した社屋は、当時、門司で一番高く街のランドマークだった。当時は1階に「待合室」「税関」 の事務所があり、2階は事務室として利用されていた。

 設計したのは、大阪・建築士の創始者的存在の「河合幾次」で、構造は煉瓦と鉄筋コンクリー ト造り、木造モルタル仕上げ。塔屋のデザインは「ゼツェシオン(セセッション)様式」でまとめられている、八角形の塔屋の部分が特に印象的だ。

 「ゼツェシオン(セセッション)」とは1897年にオーストリアで始まった若い芸術家たちの運動で、簡単に言えば過去の建築様式(表現)から分離して、新しい建築様式を創造しようといった活動なのです。 

 竣工当時は直ぐ横に海があり、大陸に夢を馳せた多くの旅人がここから旅立って行ったんだろうな。逆に、大陸や欧州からの帰国船は、沖合から「八角形の塔屋」を見つけた時は嬉しかっただろう。

旧大阪商船
旧大阪商船
八角形の塔屋の主張が凄い「旧大阪商船」、門司のランドマークだったのも納得。
旧大阪商船
夜になれば、表情が変わる。洋画のワンシーンに出て来るような風景になった!

 ここで、少し「名建築」巡りをブレークして門司港駅方面に戻ることにした、戻ると言っても約6分の道のりだけど(笑)。

 九州と言えば鉄道王国、門司港駅近くに鉄道の記念館があると知り行くことにしたのです。駅横のロータリから引き込み線沿いに進み、駐車場を横切れば「旧0哩標」、その横に「九州鉄道記念館」あった。まず目に入ったのは「ごくろうさんよ」と声をかけてくれそうな、蒸気機関車「59634」がお出迎え、その後には「C591」の姿もある。

 蒸気機関車「59634」は北九州地区での可動期間が短かったが、最後まで働いた蒸気機関車。昭和49年あたり筑豊地区に住んでいた人には、なつかしい車両なのだ〜。

59634
鉄道ファンからは「ごくろうさんよ」の愛称で呼ばれている蒸気機関車「59634」。

 ここ「九州鉄道記念館」は「旧九州鉄道本社(通称・赤レンガ)」の建物を再利用して運営されていて、「野外車両展示場」やミニ列車運転の体験ができる「ミニ鉄道公園」、「本館」は鉄道博物館なっていている鉄道のテーマパーク。それに、入館料が大人300円と安いのも嬉しい! 胸を躍らせて入館することにする。

 「野外車両展示場」で見つけたのが「寝台電車特急・月光(クハネ5818)」だ! 子供のころ何度か乗った列車だ〜。「大阪〜博多」間に新幹線が走っていなかったころ、これに乗って大阪から福岡に帰ってきて、また、大阪に引っ越していった切ない思い出のある列車なのです(涙・笑)。「月光」のネーミングは、いかにも寝台特急らしい名前だけど、昼間も走る世界初の昼夜兼用車両を連結して走る寝台特急だったんだって、知らなかった(笑)。

寝台電車特急・月光
なつかし〜〜「寝台電車特急・月光」! 子供のころ憧れた運転席にも座れる。

 屋内展示の「本館」には、九州をテーマにHOゲージ(線路幅16.5mm)鉄道模型「九州の鉄道大パノラマ」や「明治時代の客車」展示、門司港~折尾間の実際の路線風景で運転を疑似体験できる「運転シミュレーター」などがあり、鉄ちゃんじゃなくても楽しめる施設。そうだ、「折尾」と言えば駅弁の「かしわ飯」が有名だ、なんだか駅弁が食べたくなってきたよ。

 そんな事を思ったら偶然、この時の「企画展示」は「駅弁」がテーマだった! ソノひびヨリで不定期に掲載している『旅でワシが喰った駅弁を買って喰ってみろ』さんが見れば喜んだだろうな。でも、「べつに駅弁が特別好きじゃない」と言っていたな(笑)。

<後編につづく>
 

駅弁パッケージ展
「企画展示」の「駅弁パッケージ展」、博多の大名籠弁当もあった!
明治時代の客車
「明治時代の客車」展示前には「折尾」の「かしわ飯」駅弁売りの風景もある。
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