ソノひびヨリ 第四六話
兵庫県淡路島・洲本
『大阪最南端の町から淡路島・洲本をつなぐ深日洲本ライナーに乗船』
<中編> 2026年 7月11日

「洲本温泉・うるおいの湯・足湯」

淡路洲本と大阪をつなぐ狸に想いを馳せる

 芝居好きの狸の話、芝居好きの狸の話・・・と念仏を唱えるように下山していると、いつの間にか分岐地点に到達していた。やはり下は早い! 先ほど登ってきた同じ道に戻らず「厳島神社」方面へと足を進めた。歩いていると「芝居好きの狸」がどうしても気になる(苦笑)、あの表示板には「浪速の芝居小屋に行った」と書かれていたのが・・・。

 浪速、すなわち現在の大阪。残っている劇場もあるけど、ほとんどが閉館している。記憶をたどり劇場名を思い出し歩く(学生時代に四年間芝居小屋でバイトをしていたので余計に気になるのです)、道頓堀にあった昭和の劇場は「道頓堀角座、中座、浪花座、朝日座、弁天座」の「道頓堀五座」と呼ばれた劇場たち。「道頓堀角座」は上方落語のメッカ、「浪花座」は映画上映や演芸、「弁天座」は大衆演芸の小屋、「朝日座」は人形浄瑠璃、「中座」は歌舞伎や藤山寛美の喜劇を上演した・・・。『そうだ、中座だ!』、中座の奈落(舞台下)に興行の成功や安全を祈願して狸が祀られていた~! それが山上の祠に祀られていた「芝右衛門」と同一狸なんだ! すぐさま調べたら、現在も「中座くいだおれビル」に高さ約1mの「道頓堀のお狸様」の人形が祀られているそうです。これでスッキリしました! でも、淡路島と大阪が狸で繋がっているのって面白いですよね。今日、私がそれを知り思い出したのも何かの縁を感じました。

 そんなことばかりを考えていたら「自然歩道」の終点についていた、標識には右「厳島神社」と矢印がさされている、あてがあるわけでもない、では向かってみます。

帰りの「自然歩道」、少しずつ標高が低くなってきました。
左・「自然歩道」の分岐地点
右・「自然歩道」の終点

厳島神社で「洲本八狸・武左衛門」と出会う。

 「自然歩道」終点から約二〇〇mで「淡路島・厳島神社」に到着。拝殿の後には先ほど登った「三熊山」、地元の方からは「淡路の弁天さん」と親しみを込め呼ばれている神社だそうです。だけど御祭神は「市杵島姫命(イチキシマヒメノミコト)」、なぜかと言えば、神仏習合の時代に「市杵島姫命」が「弁財天」と同一とされたためらしいですね。

 掃除が行き届いた綺麗な境内を見回っていると! ここに狸(石像)を発見しました、近づいてみると「洲本八狸(すもとやだぬき)」の一つ「夜まわりだぬきの武左衛門(ぶざえもん)」と記されていた。

 この「武左衛門」は、その昔、町の人たちが「戸締まり」「火の用心」に無頓着なことを見かねて、夜な夜な役人に化けて見回りをしていたという。その時、戸締りの悪い家を見つけたら、家の外から鍵をかけ外に出られなくして懲らしめたんですって(笑)。いうなれば「防犯の神様」ということなんでしょう。

 本当の話かどうか分からないけど、割と真面目にキャラ設定や物語があるんだと感心しました。この先も何処かで「洲本八狸」と偶然出会えるかもですね。でも、次に何処に行こうか・・・・。

上・厳島神社拝殿、後ろには三熊山
下・鳥居横に「洲本八狸・武左衛門」が鎮座!?
「夜まわりだぬきの武左衛門」の顔は何とも言えず愛嬌があるようなないような・・・。

主役の「芝右衛門」を祀る神社に知らず知らずに誘われ

 次の目的地をどこにするか? 決めあぐねて歩いていたら「国瑞彦護国神社」の前に居た、木陰に入り小休憩がてら「洲本八狸」を調べてみることにしました。すると芝居好きの「芝右衛門(柴右衛門)」を中心に、八匹の狸が町のどこかに住んでいるのだそうです。その上、やはり八匹の狸にそれぞれキャラ設定と物語があるみたいです。この先の目的も目指す場所もない、狸と言えば我らが同士、動物探訪の「やまんなかタヌキ」さんもいる。身近にタヌキもいることなので愛着もある、偶然「やまんなかタヌキ」の親戚に出会うかもしれないし(笑)、ここからは「洲本八狸」を巡る旅にいたします~。

 近くに次の狸が居ないか? また調べたら「国瑞彦護国神社」からすぐの「洲本八幡神社」に居ることが分かったので行ってみました。

上・「洲本八幡神社」
下・境内にある「洲本八狸」の案内表示がありました~。

 狸のいる「洲本八幡神社」は、縁起巻物に九九〇年(永祚二年)淡路州神と称えられたとの記述が残る由緒ある神社。江戸時代には洲本城の鎮守として、藩主の蜂須賀氏の祈願所となり広く崇敬を受けてきた。

 そして、大阪「中座」の閉館により洲本に里帰りした「芝右衛門狸」を祀っている社殿があります。もちろん狸の石像も二体いました、なぜ二体なのかは知りませんが(笑)。やはり主役だから二体なのですかね(笑)。

あの社の後ろに、角座から帰ってきた「芝右衛門」が祀られています。
左が狸姿の「芝右衛門狸」、右が人間に化けた「芝右衛門狸」かなぁ?

三幕・足湯の段には「芝右衛門狸」の息子狸が登場!

 次の狸は「洲本八幡神社」の筋向かいにある「洲本温泉・うるおいの湯・足湯」にいます。足湯に浸かってのんびりしましょう、だってまだ一一時を過ぎたところ時間はたっぷりあります。この「うるおいの湯・足湯」は、洲本温泉のPRのため開設され、海水浴客でにぎわう「大浜海岸」からもすぐの好立地にあり、観光客・地元民ともに人気の休憩ポイントです。

 その足湯脇の池に浸かっているのが!「芝右衛門」の息子「いたずらだぬきの柴助」です。この「柴助」の物語は、覚えたての「化ける術」で町の人にいたずらばかりしていましたが、あるとき「北前船(きたまえぶね)」に乗り込んで(何で?)! なんと「蝦夷地(現在の北海道)」まで冒険に行ったそうです。その冒険の途中に見た「越後国柏崎(現在の新潟県柏崎市)」の港で見た花火が忘れられず、洲本で仲間を集めては花火に化けて? 町の人を楽しませたというお話です。どうやって花火に化けるのか気になりますが・・・(笑)。

「洲本温泉・うるおいの湯・足湯」、ちっちゃな狸が居ました。
「芝右衛門」の息子「いたずらだぬきの柴助」です。右手にはトンボがしきりに留まっていました、不思議。

息子の次は奥さん!? 商売繁盛の神狸?


 四匹目の狸は足湯から少し離れているようです、と言っても一kmほどの距離なので街を散策しながら向かいます。「うるおいの湯・足湯」から北方面に「洲本大明神」の前を通り、古そうな商店街「内通商店街」を抜け目的地へ向かうことにしました(でもこの商店街、シャッター街だった・・・)。シャッターを眺めながら西へ移動、「堀端筋」を越え別のアーケード商店街「コモード56商店街」に到着。

少し悲しいシャッター街だった「内通商店街」

 ここは観光客と地元の人たちで賑わっている商店街(安心しました・笑)、老舗の文具店やらおしゃれなカフェ、日用品・食料品を売っているお店が元気に営業しています。地元の人たちからは「ゴロク」「本丁筋」などと呼ばれ親しまれているようです。

 「コモード56商店街」の真ん中あたりに「憩いスペース」のような場所があり、そこに本日、四匹目の狸が居ます。その狸は「芝居好きの芝右衛門」の奥さん「買いものだぬきのお増(おます)」さんでした(家族総出演ですね)。

 そのキャラ設定は、芝居見物にうつつをぬかす「芝右衛門狸」の留守を守って子育てをした、しっかりものの狸です。それに、町で買い物をするのが大好きな「お増」さん、だけど払うお金は、夜になると木の葉になってしまう(笑)。でも、なぜか「お増」さんが来た店は商売繁盛するので、町の人たちにはとても人気があったというお話です。ご利益があるですね、だんだんこの狸たちが神さまに感じてきます。次が楽しみです。

上・「コモード56商店街」、町のメイン商店街ですね。
下・最近できたこのスペースにお増さんが居ました~。
口を大きく開いて、陽気にお喋りしているのでしょうか。

川沿いには五匹目・六匹目の狸が住んでいます。

 続いて「コモード56商店街」からアーケードを西に歩いていると、いつの間にやら「本町7丁目商店街」「8丁目商店街」続いています。この二つの商店街は残念ながらシャッターが閉まって営業をしてない店が多かった・・・、ただ周辺には個性的なお店や、路地裏に広がる観光エリア「レトロこみち」などあり活気を取り戻そうと頑張っている地域のように感じました。

 その「8丁目商店街」の西端にある交番前に居るのが「河守りたぬきの川太郎(がたろう)」です。千草川(ちくさがわ)の辺りに暮らす「川太郎」は、人間の姿に化けて関所を守り、川の清掃や防災のため土手を直したり、川で働く人たちの手伝いをする狸とされています。関所の守りをしていたので、交番の前に立っているんでしょうか? お巡りさんに聞いてみたいと思ったけど、不在でしたね(笑)。

右・このような感じで寂しい「8丁目商店街」
左・指名手配掲示板の横に魚を持って立っている「川太郎」
ちょっと猫顔のタヌキさんです。

 アーケード出て千草川沿いに歩けば、次の狸と出会えるようです。ただ、アーケードを出た途端、炎天下!灼熱地獄!とにかく暑い。吹き出す汗を拭きながら、約四〇〇m川沿い(この道、交通量が多く注意して歩きましょう)を北へ歩けば「千草川」と「洲本川」の合流地点に架かる「三合橋」の袂に「頼母子講(たのもしこう)だぬきの宅左衛門(たくざえもん)」がソロバンを携えて居ました。

 頼母子講とは、一定の仲間同士が定期的にお金を出し合い積み立てていて、順番にその積み立て金を受け取る相互扶助型の民間金融組織のようなものです。洲本狸の長老の「宅左衛門」は、たくさんの蓄えを持っていて、困った狸がいれば蓄えを分け与え助けてあげたという太っ腹のタヌキさんです。言うなればタヌキ界のお金の神さまてとこですかね。

 後、二匹、この炎天下との勝負です!

この道です(寺の裏)、交通量が多いです!
千草川の「三合橋」の袂にお金持ちの狸「宅左衛門」が居ます。
ふくよかな「宅左衛門」さんですが、お家はどこなんでしょう・・・。


後編に続きます

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