ソノひびヨリ
2023年 5月4日

無料、無料、無料の後はちょいと贅沢なランチタイム!
「民俗資料館(長屋門)」より「新町通り」に戻り、先ほど訪れた「五條市まちなみ伝承館」の斜め向かい、真っ白な暖簾が掛かる「五條 源兵衛」さんに到着。
この「源兵衛」さんは「新町通り」の景観に溶け込んだ築250年の町家を改装したレストランなのです。使用している器類も、この家の蔵から出てきたものを大切に使っているそうです、今流行りの持続可能的コンセプトなのです。
白い暖簾をくぐって、白い玉砂利がひかれているアプローチを進むと趣のある母家に到着。引き戸を開け中に入れば、思った以上に明るい(うまく自然光を取り入れている)。通されたメインホールは天井が高く広々としていた、町屋にある小上がりを無くし全席・テーブル席にしているからだろう。無論、履き物を脱いで上がる個室もある、この席も基本テーブル席になっている。


案内されたテーブルは、採光がよく取れ料理が映えそうな良い席に着けた。そして、ここのお昼のメニューは2種類のコースのみ(この時はです。詳しい情報は確認してください!)、五條市の旬の野菜を中心にした地元野菜を主役とした「五條野菜のコース」3,500円と「大和の恵みの昼コース」5,500円。「五條野菜のコース」は収穫に応じて40種類以上の野菜を使用したコース、「大和の恵みの昼コース」は「五條野菜のコース」をベースにお肉料理が付くコースです。ちょっと贅沢なお値段だと思うかもしれないけど、安心で新鮮な朝摂りの地野菜がふんだんに食べられる、見た目も美しい満足できるはず~。なんと言っても、日本最古の婦人誌に取り上げられ、ミシュランガイドにも掲載されたお墨付き!!
頼んだのは「五條野菜のコース」、待つこと暫し最初にサーブされたのは食前酒ならぬ食前ジュース。果実を使ったお酢のジュース、日差しが強く喉が乾いていたので嬉しい水分補給だ。口当たりの良く角が取れたお酢のジュースは「自然の恵みのスポーツドリンクや~」と一気に飲み干した。

下・果実を使ったお酢のジュース
農園、植物園が凝縮された箱庭のような料理に感動
期待して持っていた一品目は、三つに仕切られた(一桝がお椀大)お盆に三品が登場~。左手から、大和芋をメインにしたしんじょうのすまし汁。しんじょうの上には色鮮やかなアスパラの花が添えられている、見た目は菜の花のようだけど苦味がなく甘味が美味い(初めて食べました!)。
真ん中の一品には、地元で四代続くお豆腐屋さんの汲み上げ湯葉、その下には「わらび、ゼンマイ、・・・」もう一種を忘れてしまった。春の名残を感じさせる山菜が隠れている、ここにも色鮮やかなエディブルフラワーのミニ・パンジーが可愛く添えられている。そして、右手の料理は炊き合わせ、セリのお浸しを中心に高野豆腐、椎茸、大根だったかな・・・。
すでに、この三品で20種類以上の野菜が楽しめている、お味はもちろん、視覚でも美味しさを感じさせてくれる。一つ難点だったのは、今日の献立が書かれたお品書きがなかったことだ、頼りになるのは記憶のみ。でも安心してください、サーブ時にはオーナーシェフ中谷さんが一品々々丁寧に説明してくれますよ。(それを書き留めていない私が悪いのです・苦笑)

次に出てきた一品は、私にとって逸品の「焼き筍」。もちろん「朝採りの筍」、熱々焼きたての皮を脱がせば、水気が残る艶々の白い肌から湯気が立つ。春の名残を惜しみつつかぶりつく、甘さが口に広がる~苦味・エグ味もなく香ばしさが鼻から抜ける。また、この筍の凄いところは、外皮を2・3枚も剥けば次の皮から食べれるのだ!! 筍好きにとっては、こんな筍が食べられるなんて本当に贅沢なことなのです。
そして筍料理がもう一品「筍の天ぷら」が登場。これも朧げな記憶だけれど、確か衣は葛粉だったと・・・(すみません)。焼き筍より短く太め筍を使用している、料理によって形を選んでいることが伝わってきます。
個人的ですが、私は筍の腰の部位が好きなんです、一般的には柔らかい先っぽ好みの人が多いですがね。筍の旨味は、土に埋まっている腰の部分に凝縮されていると信じて疑わないです。
揚げたての天ぷらをひと齧り、やはり甘味が口内を駆け巡る。衣も薄めで油濃くなく、筍の味が楽しめる。もうすぐ春から夏へ移り変わる、筍も来年まで食べられない・・・過ぎ去る春を惜しみつつ最後のひとかけを涙し頬張るのでした・・・。


料理の締め、ご飯ものがテーブルに置かれた、サーブしてくれたのは話し上手な中谷シェフ、おもむろにシェフが『わらびご飯です!(笑)』と。どんなものだろうか、器の中を見てみたら「!?」が浮かぶ・・・。 もう一度、お椀の中身を確かめるように見るが、そこには「わらび」の姿がない? そんな挙動不審な行動を察知したのか、シェフが『わらびを探しちゃダメですよ(笑)』。続けて『わらびご飯はおかわりできるので、是非二膳目は出汁茶漬けで食べて下さね』とだけ言い残し厨房に消えていった。
「わらび」の謎を解くために注意深く食べてみた、すると「わらび」のほろ苦い味がするじゃないかい!! ご飯のどの部分を口に入れても「わらび」の風味がするのだ(姿は見当たらないけど)・・・。「わらび」の姿がない「炊き込みご飯」、なんとも不思議だ・・・、ペースト状にした「わらび」を混ぜて炊いているとしか考えられない(これも聞き忘れた・すみません)。摩訶不思議な「わらびご飯」だが、あまりの美味しさに三膳も頂いてしまった(笑)。この後は、コースの最後お口直しを迎える。
お口直しのデザートは名産の葛を使用したスイーツ「くず餅」。ここにも地元素材にこだわるシェフの思いを感じさせる素材を使っている、葛に浮かんでいるのは今年咲いた桜を塩漬けにしたのを使っている。最後の最後までシェフの地元食材への偏愛さを感じさせてくれる料理だった、ちょっと変態じみている(笑)。
食べ終え総括すれば、これだけの多くの地野菜を食べられるのなら3,500円(当時はです)は、お得感があり過ぎます! お店の空間も素敵だし、シェフ並びにスタッフの丁寧で暖かなホスピタリティー、五條の魅力を存分に味わえる、特別なお店に間違いなしです! 来店するときは必ず予約を、今回のように上手くいきませんよ(笑)。

中・シェフおすすめ「わらびご飯の出汁茶漬け」、旨いんですよ!
下・締めのデザート、一口大のくず餅です。
吉野川は紀ノ川!? 「グワシ~~!!」・・・
お腹も心も満足して、源兵衛さんを後にして吉野川河川敷を目指す。毎年この時期には、五條の春の風物詩「吉野川を泳ぐ鯉のぼり」が群泳を見せ空に棚引いている(毎年4月中旬から5月末まで吉野川河川敷にて)! 河川敷で帰る時間までのんびりとする事にする。
のんびり過ごしている間に、少しこの川の名称の余談を。この川「吉野川」は、隣の和歌山県に入れば名称が「紀ノ川」に変わるのです、即ち奈良県内(上流部分)が「吉野川」で和歌山県内(下流部分)を「紀ノ川」と呼ばれているんです。上流、下流で名称が異なるケースは全国でも間々あるけど、これってややこしくないか!っていつも思う。河川法上は、水源から河口まで「紀ノ川」になっているのにね。


まぁ、河川は昔から地域と深い関わりがあるので、同じ河川でも地域によって名称や愛称が違うみたいです。長野県の日本一の長い川「信濃川」も上流部分は「千曲川」、近畿の琵琶湖から大阪湾へ流れる「淀川」は、京都府で「宇治川」、滋賀県になれば「瀬田川」と三回も変名する。本当にややこしいです。
まぁ、そんな事はどうでもいいか! ゆったりと鯉のぼりを眺めていると、午前中に買った柏餅を思い出した。端午の節句にはちょうどいいロケーション、鯉のぼりの泳ぐ姿を見つつ柏餅を食べるなんて乙なものだ(わりにお腹がいっぱいだけど)。
食べ終わるとそろそろ帰る時間だ、河川敷を歩いて五条駅に向かうことにしよう。その途中、お土産のお酒を買うため「山本本家」さんに再訪、忘れるところだった(苦笑)。


帰りもJR和歌山線「五条」から南海高野線「橋本」で乗り換えるルート、その乗り換え時間を利用してミニ散策のため駅から出ることにした。「橋本」の駅舎を出て直ぐ右手、去年秋に亡くなられた「楳図かずお」先生の「まことちゃん」像が立っている。
なぜ、ここに建てられているか? それは、先生が幼少期から青春時代を五條市で過ごしていた、隣接するここ(和歌山県橋本市)まで漫画のアイデアを生み出すための散歩コースだったみたいです。そんなご縁でここに「まことちゃん」がいるのですね(若い方は知らないと思うが)。もう少し時間がある、駅前の商店街を歩いてみた。
商店街は100mほどで終わり、その先に「吉野川」が見えた。あっ!いえいえ、ここは和歌山県内「紀ノ川」でした(笑)。夕暮れ近い河川敷に下りていけばタイミング良く、「紀ノ川」に架る橋梁を南海高野線「こうや号」が高野山へと向かっていった。

下・楳図先生のまことちゃん像、「グワシ~~!!」 この指の形できるかな?
