第三〇話 奈良県 宇陀市
『龍が祀られるパワースポットへ』<前編> 

ソノひびヨリ

2023年 12月25日 

奈良県宇陀市「室生龍穴神社」
杉木立に囲まれ鎮座する「室生龍穴神社」

 新年辰年、最初の旅はここ最近パワースポット神社として話題になってきた宇陀市室生に鎮座する「室生龍穴神社」に参拝にきました。なぜここを訪れようと思ったかは、色々な偶然が重なりクリスマスの日に呼ばれるようにやってきた(まぁ、気まぐれと言えば気まぐれです・笑)。

 秘境感満載の「室生龍穴神社」への公共交通機関アクセスは、昨年に神社前までバスが延伸されたことで比較的訪問しやすくなりました。最寄り駅の近鉄大阪線「室生口大野」駅前から奈良交通路線バスで約19分、「室生龍穴神社」に到着します。ただ、バスの本数は午前8時から午後6時の間1時間に1本・・・、帰りの時間は必ず見とかなくちゃ危険です! だけど、この本数のなさが秘境感漂うんですけど~(笑)。

「室生龍穴神社」停車場の時刻表、帰りの時間をちゃんとチェックしておきましょう!

 バスを降りれば目の前が「室生龍穴神社」だ、鳥居の前には左右にそびえる二本の杉、樹齢600年以上と言われている。辺りを見渡しても人が見当たらない、平日の朝10時なのに・・・、この静寂が神域の外なのにパワーを感じてしまう。早る気持ちを抑えつつ、杉の古木に見つめられるように前へ進めば神域に入る鳥居。この鳥居もかなり古いものだと思う、菌類?などが腐食して石肌の色が赤褐色に変色していた。

 鳥居をくぐり広い斎場らしき広場を通り、石段を上がればそこにも巨大な杉が待ち受けている。だんだん、杉の幹を見ていると龍の胴体のように見えてくる、これは神域のパワーなんだろうか・・・。

 拝殿の前には既に正月飾りが飾られていた、その周りに網が張りめらぐされている、きっと鹿よけなのだろう。鹿には神さまなど関係なく、正月飾りの葉牡丹などは旨そうに見えるんだろうな(笑)。などと雑念に塗れながらも、神聖な拝殿へ向き合った。

神域に入る人を見定めるように左右に立つ樹齢・約600年の巨大杉
巨大杉からすぐに鳥居が立つ、まるで杉を二の鳥居と一の鳥居みたいだ。
川のない小さな石の橋を渡り、石段を登れば拝殿。

 この神社の祭神は通称・龍神さまだけど、その本当のお名前は水を司る神「高龗神(たかおかみのかみ)」と・・・思いきや拝殿に別の名前が掲げられている? そこには「善如龍王」と書かれていた、調べてみると「高龗神」と「善如龍王」は同一人物(神)と分かったのだ。考えてみると日本書紀や古事記に出てくる神さまも、名前が幾つもあってややこしい事を思い出した(苦笑)。

 それと「善如龍王」は「空海」と関係があるらしい、その昔、干ばつで困っている時に「空海」が雨乞いの祈祷をすると「善如龍王」が現れ願いを叶えたと伝えられている。だからここが「室生寺」の近くに鎮座しているのだとも分かったのだ。

 謎が解けたら、心が落ち着いた! 「ご挨拶」をするために拝殿の鈴を鳴らしローソクに火を灯した。なぜここでは「ご挨拶」なのかと言えば、この拝殿の後ろに本殿があるからなのですよ。

 拝殿の横を通り奥の「本殿」へと目をやれば、杉木立の中に朱色に染まる本殿、緑と赤のコントラストが美しい。時より差し込む日の光が心地よさを増幅させてくれる、優しさを感じる神域で参拝を済ました。

 ちなみに「本殿」は江戸時代・中期(1671年)に建てられたもので、奈良県の指定文化財に認定されています。

拝殿に「善如龍王」と掲げられている。その奥に赤い本殿が見える。
杉木立の隙間から、日差しが射すと神秘性がパワーアップする!
神域の神域、自然の中にあるパワースポット

 ここでの参拝を終え、次に向かう「室生龍穴神社」はここで終わりじゃないのですよ。この先には、御神体により近づける超神域・パワースポット「室生龍穴神社・奥宮」こと、龍神さまがいらっしゃる「妙吉祥龍穴」があるのだ~。

 向かう前には、神社横の綺麗なトイレでお不浄は済ませておきましょう、奥宮にはトイレなどないですから。

 神社を出て、バスの停車場がある県道28号線を南に約500mほど歩けば案内板が出てくる。県道には歩道がないので、車は少ないけど注意して歩くことをお勧めします。たまに来る車のスピードが異常に速いから!! 

 その案内板に従い左方向に進めば、なかなかの坂道が待っています(笑)。道は舗装されているので車でも行けますが、歩いて森林浴で穢れを落としてパワースポットに入るのが良いです。道中、熊に出会さないかとビクビクですが(苦笑)。

上・境内にあった案内図 下・「室生龍穴神社・奥宮」「妙吉祥龍穴」への案内表示、ここから坂道になる。

 案内板から約20分の道のり、ほぼ上り坂です覚悟をして挑みます(笑)。歩き出して10分ほど少し緩やかになった坂道を右カーブすれば、中間地点付近の奇岩石「天の岩戸」がある。なぜ、ここに「天の岩戸」があるのか定かでないが、ちゃんと拝所もある、天照信仰の場所なのかも知れないので拝んでおくことにした。

 鳥居の左右には縄が張られていて結界のようだ、鳥居の側には高さ5m弱の岩が真っ二つに割れていて両側の岩より注連縄が渡されている。岩の割れ目の隙間に賽銭箱が置かれていたので、神域の入場料としてお賽銭を入れとおくことにした。

「天の岩戸」信仰は日本中にあるけど何故なんだろう・・・。

 目的地まで10分、ひたすら登りカーブを曲がると「室生龍穴神社・奥宮」「妙吉祥龍穴」の表示が見えてきた。その時だ「キ~ン」と響く鳴き声の様なものが聞こえた! 鳴き声の方を見れば、白いハート型のお尻が藪に消えていった。熊でなく鹿だった・・・よく考えれば鹿は神の使いとも言われている(ちなみにちゃんと、熊避けの鈴を付けていますよ)。これは、吉祥のあらわれだと喜び「奥宮・龍穴」へ向かった。

 「奥宮・龍穴」は渓谷の底部分に鎮座している、なので階段を降るしかない・・・。この参道は木の根などが地表に出ていて、雨なのどの日は特に注意してください、天候の良い日でも歩きにくいですから。

 100段ほどの急な階段の終わりに「遥拝所」がある、ここが「室生龍穴神社・奥宮」「妙吉祥龍穴」だ。小さな「遥拝所」が建っている、ここは土足禁止なので注意してください。私は知らず知らず土足で上がってしまった・・・、すぐに気づきましたが申し訳ございませんでした。

 遥拝所からの眺めは、右手側に「招雨瀑」という滝が見える。意外とかわいい滝だなと感じた、龍神さまの棲む滝ならもっと凄い滝なんだと勝手に想像していた。その雰囲気は「静謐で穏やか」と感じれらる場所だが、雨でも降ればその表情はガラリと変わるだろう。

 そして左手には、巨石に「穴」?のようなところに注連縄が掛かっている、ここが「善如龍王」が棲んでいると言われている「妙吉祥龍穴」だ。「穴」とは分かりずらいのだけれど・・・、ただ自然な佇まいが時代を超え人々が守り受け継がれてきた証だろと感じる。手を入れずにあるがままを残す、それが自然崇拝の本質だと考える。冬の空の下、木立から聞こえる鳥の囀りと水が流れる音以外は何も聴こえない。そんな静寂の中で深く深呼吸をし、もう一度、遥拝をしてここを後にする。深呼吸をしたら急にお腹が減ってきた、昼時までにはここから近い室生寺周辺へ向かうことにした。遥拝でお願いしたことは、帰りに熊に遭遇しないことを祈ったのだ(笑)。

後編に続く

「奥宮・龍穴」に入る鳥居、急勾配の谷を降りれば。
遥拝所からの「招雨瀑」。
古の自然崇拝を感じる、パワーをもらい帰りの階段を登るのだ。
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