第三五話 香川県観音寺市 <前編>
『奇跡を呼び寄せた、天空の鳥居・高屋神社に登山?』 

ソノひびヨリ

2024年 12月21日~22日 

曇天の中、雲の隙間から西日が射す。
「思い立ったが吉日」と香川県観音寺市へと向かうのだ

 2024年の暮れも押し迫った19日、まだ2025年の年賀状用の写真が決まっていない。「どうしたものか・・・」と、悩みつつも何気なくYouTubeを閲覧していた。その時、偶然見つけたのが香川県観音寺市に鎮座する「天空の鳥居」こと「高屋神社」だった。いくつかのYouTube動画を確認して、2025年の年賀状の写真はここすることにした。すぐさまグーグルマップで位置関係と交通手段を調べ、日向き、日の出・日の入りを確認する。「思い立ったが吉日」2日後の12月21日土曜日に出発することにする、あいにくその日の現地天気予報は雨だが・・・。

 21日、出発地・大阪は曇り、現地もやはり「曇り一時雨」の予報だ。まぁ、一か八かで移動を開始し始める。交通手段は南海電鉄の「徳島すきっぷ」を利用して徳島港へ向かう。このキップは前にも紹介したが、なかなかお得なキップ。南海沿線の各駅から「和歌山港」までの鉄道乗車賃と、そこからの「徳島港」までの「南海フェリー」の料金がセットになっていて2,500円なのだ。8時25分の徳島港行きに乗船、約2時間の船旅にて徳島に上陸。

 「徳島港」からレンタカーピックアップのため市街地に向かう、時間が欲しいので港に一台だけの客待ちタクシーに飛び乗った。ここから市街地(徳島駅周辺)に向かうには本数の少ない路線バスしかない、時間が無い方は乗降客より逸早く下船してタクシーに乗り込むことだ(笑)。

南海・和歌山港駅よりブリッジを渡り南海フェリー「かつらぎ」に乗船。紀伊水道の真ん中辺りでは青空が見えた。
「徳島港」に到着後、市街地の「ガッツレンタカー」でこの旅の相棒をピックアップする。
余談ですが「ガッツレンタカー」のイメージキャラは、あの「ガッツ石松」さんです。
ガッツなレンタカーで快適ドライブで香川を目指す

 「ガッツレンタカー」で車をピックアップ、11時過ぎに香川へスタート! フェリーより下船、約30分の速さで移動と事務手続きを終えた、上出来だ。少し渋滞気味の市街地を抜け、吉野川を渡れば「徳島自動車道」徳島インターチェンジ入口だ、ここから約1時間45分・約125kmのドライブを楽しむ。「徳島自動車道」は片側一車線の道だが渋滞もなくスムーズに進んでくれた。徳島県を抜け「四国横断自動車道・高知自動車道」に経由、愛媛県「川之江ジャンクション」にて「高松・瀬戸中央自動車道」、「高松自動車道」に乗れば目的地の香川県観音寺市もうすぐ。

 途中の「徳島自動車道」山間部走行中は気持ちいい青空を見せていた空が、観音寺市「大野原インター」を出るときには鉛色の曇天に変わっていた。13時半に観光スポットの琴弾公園内・琴弾山山頂の「銭形展望台」駐車場へ到着。

 本日の現地行動予定は、日の入り17時1分の1時間前「天空の鳥居・高屋神社」に到着をしてのロケハンが目的。駐車場のある、山の麓の「高屋神社・下宮(里宮)」より山上の「本宮」まで、約1時間(距離1,500m)の登山道。15時までは、あまり興味のない(失礼!)観光スポットを見て時間を潰すことにした。空模様は相変わらず一面に雲が覆い、今にも雨が降り出しそうだ・・・。

 展望台で「銭形砂絵」を鑑賞後、まだ時間が余っているので展望台下の「日本の夕陽百選、日本の渚百選」に選ばれている「有明浜」を散策。その途中についに小雨がパラつきだした・・・。浜風も強く、体が冷えてきたので遅めの昼食を食べに車へと戻った。昼食はもちろん「名物」讃岐うどんにする。

琴弾公園内・琴弾山山頂より「銭形砂絵」を眺望。瀬戸内の海には雲が覆っている。 
同じく琴弾公園内「有明浜」、小雨と強風の中に古びたベンチがぽつんと置いてある。寂しい風景だが、沖の向こう広島県の方に青空が見える、吉兆だ。
「高屋神社・里宮」に行く途中で見つけた「手打うどん・かじま」さん。キツネうどん(小)500円、おでん(1本)100円と安い。小うどんなので量が少ないだろうと思い、おでんを3本(厚揚げ・じゃがいも・ごぼう天)も取ってしまった。うどんが来て後悔・・・、食べても食べてもうどんが減らない・・・。キツネ(アゲ)もうどんを覆う大きさだ、旨いのだけど量が多すぎた(苦笑)。
気軽なロケハンが、悪天候の登山になった・・・。気軽な気持ちで出かけてはいけません(苦笑)。

 昼食をいただいた「手打うどん・かじま」さんを出て、5分も車で走れば「高屋神社・下宮(里宮)」駐車場に到着。ここで「なぜ、こんな天候の悪い中、ロケハンといえど山頂まで登るのか」を説明しておこう。

 私の生業である広告制作業という仕事柄、風景写真やムービー撮影の現場責任者(現場監督)をやることが多い。まだ、駆け出しの頃、今日の天候に似たロケがあった。今にも降り出しそうな厚い雲、本日のロケ撮影は中止かなと思い、監督の指示を待っていた。思った通り監督から、一度ロケ車に戻る指示を受けたのだが、一向に撤収する気配がない? 疑問に思い熟練のカメラマンさんに尋ねてみた、その答えは「4時のバカっパレ」と答えが返ってきた。「?」が頭を駆け巡っていると、横にいたアシスタントの方が「こんな天気の日にでも、4時あたり(西日)に雲を掻い潜り、お日さまが顔を出すことが多いんだよ」と教えてくれた。それ以来、天候の悪いロケでもこの教えを必ず守っているのです。

 その教え「4時のバカっパレ」を胸に「高屋神社・下宮(里宮)」駐車場より登山道入口を目指した。

「高屋神社・下宮(里宮)」の本堂にて参拝、安全祈願をする。何よりも野生動物の遭遇がないことを祈った。
「高屋神社・本宮」が鎮座する標高404メートルの「稲積山」。ふたつあるピーク、奥の頂が本宮なのか・・・?。

 ここ「高屋神社」は1000年以上の信仰の場であり、平安時代の「延喜式・神名帳」に「讃岐国刈田郡高屋神社」とあり「延喜式内社・讃岐二四社」の一社。即ち、由緒正しい神社なのです。御祭神は 「天照大御神」の孫で皇祖神の一柱「邇々杵命(ニニギノミコト)」、「邇々杵命」の妻「咲夜比女命(サクヤヒメミコ)」、食物の女神「保食命(ウケモチノミコト)」の三神。お宮の構成は、登山スタート地点に「下宮」または「里宮」、本宮までの1500mの途中(下宮より500m位に)「中宮」があり、「稲積山」山頂に天空の鳥居が建つ「本宮」が鎮座する、三宮構成の神社です。

 駐車場より300mほど進めば参道入口、そこには杖と物々しい看板が立っている(笑)。そこには『軽装厳禁です!! 登山はすべて自己責任です!!』と、これを読めば相当キツイ登山道だと理解できる。だから「杖」は、ありがたく使わしていただくことにした。

 参道スタート時間は15時、登山所用時間が1時間、本宮には16時に到着予定だ。

初めてのトレイルなので「ゆっくりマイペース」で登ることにする、安全第一が大切。 

竹の杖を設置してくれている、奈良の三輪山を思い出し杖を借りた。この看板を見ても軽装で登ろうとしている人がいた、頂上では見かけなかったが。
上・ストレートで急な舗装道で始まる参道。
下・10丁目にある「中宮」、コンクリートに濡れた枯葉、確かに歩きづらい。
ガレの急な登り道に続き、道の真ん中に轍ができている歩きづらい道が続く。

 参道の3分の2ほど(5丁目付近)で、雨と雹にやられた~! 防水パーカーを着込んで木陰でしばらく休息をとる。カメラも濡れるのが嫌なのでリュックにしまうことにした、トレイルの模様は後編に詳しく写真と説明をするのでご安心を(笑)。

 少し雨脚が弱くなった隙を突き、2丁目まで進む、ここで最後の難関がある。約270段もの石階段だ、雨後の石段はとにかく滑りやすい、時間をかけてゆっくり登り山頂に到着。そしてようやく振り返り、その風景を確認すると! 確かに「天空の鳥居」だ! 到着時間が15時43分、歩行時間・約40分、まずまずのペースで登れた(かなりしんどいです・笑)。登頂の喜びはさておき、空模様は相変わらずの曇天で小雨がパラつく、「4時のバカっパレ」にはほど遠いありさまだ・・・。まずは本殿に挨拶をする、お賽銭は奮発して500円で「日」のお出ましを祈った。絶望的な空模様だが仕方がない。日の入り前までは待つことにしよう。

最後の難所、急な石の階段。途中で嫌になる段数だ・・・。
ご覧の通りの曇天。たまに小雨がパラつき、強風のため体温が取られていく。しばし吾妻屋で待機した。
奇跡は起こる、いや、500円のお賽銭が願いを叶えてくれた!

 誰もいない吾妻屋で寒さの中、待つこと約30分、対岸の中国地方で沸いた雲が西から東へと流れていく。先ほどよりも風が強くなったことに気づいた、雲の脚が早まっている。「おぉ~!」これはチャンスかもしれない。先に確認しておいたポイントに三脚を立てカメラをセット、あとは祈るしかない。

 待つこと5分、すると雲の一部が薄くなっている、白く輝き出した!! 雲が割れている! そこから一筋の光線が海面に届き、光の華が咲き出した~。奇跡が起きた、いや違う、神様が叶えてくれたのだ! 先ほどの500円が功を奏したのだ。

光の華が海面に差し出す瞬間。

 喜んで見惚れている場合ではない、この光は10分も持てば消えて無くなる。足早に次のポイントに移動しシャッターを切っていく。割れた雲の下に、次々と光を遮る雲が流れてくる。だが、日の力の方が優っている、日の力で雲を飛ばし、また一筋の光線が斜めに走り出した! 

 クライマックスが訪れた、天から海に降り立つ神の道のような光の筋が。時間にして数秒、瞬く間の光のショーだった。光の筋が薄く消えていくと、本殿にとばりが落ちてきた。「4時のバカっパレ」ほどではないが、十分満足できるロケハンだった。時間を確認すると16時30分、そろそろ下山するのが安全だ、再度、本殿に向かい御礼と「明日もよろしくお願いいたします」と願い帰路に着く。

一瞬、光が弱まる気配が・・・
すると、天より光の道が現れ出す!

 帰りの山道は、すでに暗く危ないのでヘッドランプを装着し下山(懐中電灯持参をお勧め)した、それでも足場が悪く数回足を取られそうになった。下山時間・約30分、日の入りの17時に駐車場へ帰還した。本日の行程はこれにて終了、ホテルハイパーイン観音寺駅前にチェックインを終え夜の街へと繰り出す。

<後編に続く>

居酒屋・時々さんで一献、疲れを癒す「いりこ酒」。「地ガキの炭火焼き」いい肴だ。

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