ソノひびヨリ 第十八話
宮城県・仙台周辺  震災遺構と復興への食の旅〈後編〉

仙台市青葉区 極楽山 西方寺「定義如来・五重塔」
海辺から山辺へ、あの有名人も大好きなソウルフードを求め

 さぁ、そろそろ次の目的地に向かう。一挙に山間部へと約50km(約1時間10分)のロングドライブだ。荒浜地区の田畠を抜けて仙台市中心部(さすがは都心、渋滞がありますよ)を通り、川内トンネルから仙台西道路、愛子バイパス(無料)、国道48号線とほぼ一本道で快適に車を走らす。広瀬川に架かる「熊ヶ根橋」を渡り、次の三叉路を右折、県道263号に入る。この辺からは牧歌的な風景が広がり、時間があれば散策をしてみたい所だった。

 そして、次の分岐もいい! 大倉ダム湖(展望台があります)を右折(県道55号)、そこは都心の喧騒を忘れさせる山間部(仙台市内だけどね)だ〜。窓から入る風が緑の香りがして気持ちが安らぐ(この辺りには平家の落人伝説があるらしい)、そんなことを思っていたら到着。

 仙台のソウルフード「三角あげ」の揚げたて「あつあつ」を売っている定義山にある「定義とうふ店」。

西方寺参道に店を構える「定義とうふ店」さん。平日というのに、多くのお客さんで賑わっている。

 仙台が誇るスーパースター! サンドウィチマン・伊達ちゃんも大好き(もちろん、志賀シェフも大好き)! 「三角あげ」だ。これ、テレビで見て、一度食べたいと思っていたのです。

 その食感とお味は「カリッ」と「フワ〜」で、その後、鼻孔に大豆の香りが抜ける、噛むほどに大豆の味がしっかりとするのだ。油濃さはまったく感じない、伊達ちゃんが言っていた「カロリー0」の意味がよく分かったよ(笑)。好みでテーブルに置いてある、しょう油、七味、ニンニク入り七味で味変を楽しんでください〜。

 でもこれ、またしても完全に酒の肴だよね・・・、酒が呑みたいです。車には「純米酒・閖」があるのに(我慢です)。

これが名物「三角あげ」! もう一つの名物「豆乳」は売り切れだった(ガッカリ)。

 短時間でお昼とおやつを頂き、お腹が一杯です〜。ここで夜の事も考えて「極楽山 西方寺」にお参り散策に行きましょう。「定義とうふ店」前の参道を150m行けば、登録有形文化財の山門があります。

 この山寺は「一生に一度の大願も叶えていただける如来様」として有名で特に「子宝、縁結びのパワースポット」として多くの参拝者が訪れます。登録有形文化財の山門だけでなく、境内にはその他4つの文化財があり見所満載です(このお寺にも平家落人伝説がありました)。

 何と言っても圧巻だったのは、総青森ヒバ作りの「定義如来 五重塔」、ここ「映え」ポイントです!

「極楽山 西方寺」登録有形文化財の山門。
平家から源氏へ、文化横丁で文化的飲食を
文化横丁の入口、黄昏れたいい時間です。

 西方寺から仙台市中心部に戻り、相棒タントを返却(ごくろうさま)、ホテルにチェックイン。17時過ぎになっている、次に行くお店はこじんまりとした人気店、予約は受け付けてないので足早に向かう事にした。

 このお店も、志賀シェフに教えてもらい「是非、行きたい」と思った酒場だ。文化横丁の名店、その名も「源氏」。

 この店には暗黙のルールがある、それは「アルコール四杯迄の暗黙のルール」だ! なんて大人な感じなのだろうか。その上、一杯注文につき一品の肴が付いてくるシステム(その他の肴は店内にメニューが貼られていて注文できます)、静かにゆったり呑めそうだ。

 期待を込めて文化横丁に着いた。通りの真中くらいに、細い路地裏に繋がる小径があり、そこに「源氏」のサインを見つけた。細い小径を右に曲がれば縄のれんの玄関が見える。

細い小径を右に曲がれば「源氏」があらわれる。

 店の中は、すでに8割りがた埋まっていた! 静かに引き戸を閉め少し待つ、店の人も出てこない・・・。暫く待っていると常連さんらしい老紳士が声を掛けてくれた、『空いている所に座りなよ』と席を指差し言ってくれた。お辞儀をし、着席した。

 座って間もなく、奥から女将さんが出てきた。絣の着物にかっぽう着の雰囲気がある女将さんだ、まるで京都か金沢の店に迷い込んだような錯覚がした(笑)。ぼ〜っとしている暇はない、女将が居る間にオーダーを告げた。

 一杯目は生ビールを注文、一杯目に付いてくる肴は「ブロッコリーの酢の物とぬか漬」。二杯目からは日本酒ぬる燗、日本酒は4種類ほど店内に置かれていた(常連になれば奥から違う銘柄が出てきそう)。二杯目の肴は「冷やっこ」、三杯目の肴には地元の海で上がった「刺身盛り」これがコリコリ新鮮で旨いのです。

この日の日本酒が棚に並んでいる。手前のタンクは年季の入った燗器だ。

 途中で一品、肴を追加した。壁のメニュー表で気になっていた「ホヤ佃煮」を。「ホヤ」は「生」か「塩辛」で食べるのもと思っていたが、これ絶品の郷土料理です! 甘辛く煮た「ホヤ」の食感は完全に貝、噛んでいると「ホヤ」特有の磯の香りがほのかに広がる、最高の酒の肴だった。

 最後の四杯目。付いてくる肴は「〆」のようだ、「おでん盛り合わせ」か「仙台味噌のみそ汁」のいずれかから選べる。悩んだ結果「おでん」を選択した。

 静かにゆったりと四杯の酒を呑み終えた、隣りになったお客さんとも少し話しをさせて頂いた。30半ばの彼は、東京から出張で毎月来ていると言う。その度、帰る前には必ずここに寄り「心を落ち着かせてから帰る」と語ってくれた。誠にそんな雰囲気が漂うよい名酒場でした。

「ほや」が苦手な人にもオススメの一品「ほや佃煮」。 だまされたと思って食べて!

 源氏を後にして、さて、もう一軒! 次も志賀シェフの青春時代に友達と通ったお店に向かう。文化横丁から徒歩15分、立町にある「餃子アップル」へ。彼から『壁にはチェッカーズのサインがある(古いか・・・)』『オヤジさんは男前だ』」とか、そんな話ばかりで肝心な味の話など聞かずじまいだった(笑)。

 お店は繁華街から少し離れた場所にある、昭和の匂いのするのれんをくぐれば、黒電話がある昭和の世界だった。人柄のよさそうなオヤジさんが出迎えてくれ、焼餃子と瓶ビールの定番を注文した。

 焼き上がった餃子を頬張りながら彼の話をした。残念ながら彼の事は、思い出せないみたいだ(そりゃそうだ、なんと言っても30年前だもの)。『帰ったら彼の写真を送ります、もし良ければ記念に一枚をとらしてください』とお願いした。『写真はことわってんだけどな、話が話だから』と心良く応じてくれた。(後日、志賀シェフの写真と共にお送りした)

 そうそう、肝心のお味は「外カリ、中ジューシーは当たり前、餡は豚肉と野菜のバランスが絶妙に良く、にんにくのパンチが効いている美味しい餃子でした〜。

 帰りにはオヤジさんが、『この街が気に入ったなら、また来てくださいな。その時に気が向いたらここにも。この年だからやってるかどうかは、分かんないけど』と笑って言った。

 店を出て『必ず来るよ』と、小さく呟きこの日を終える。

餃子・アップルの焼餃子 一人前420円
 市場で朝ご飯、新鮮な朝、新鮮な魚介類。
「仙台朝市」

 2日目・仙台の朝といえばここでしょう!「仙台朝市」。少しは早く来過ぎたため開店前の店が多い。でも、朝の早い魚屋さんは既に賑わいをみせている、まずは一周しながらイートスペースがあるのか探してみよう。

 その結果、いい「ホヤ」があった「こがね海産物」さんで『食べれます?』とたずねたら、イキのいいお姉さんが『何でも捌くよ、ここで食べていきな!』『もし、ご飯が欲しかったら、前のおにぎり屋さんで買っておいで』と、ここ「こがね海産物」さんは持ち込みもOKだったのだ! 「朝取り・ホヤのお刺身」と「旬の赤貝刺身」をたのんで、おにぎりを買いにいった。最高の朝ご飯だよ、ここはね! 

 ついでに朝酒も頂いた(笑)。

「仙台朝市・こがね海産物」の店頭。立派すぎる「活けのホヤ」、ここでしか食べれない。 
「仙台城跡」は迂回ルート、「政宗公」は陣幕の中に。

 満足の朝ご飯で準備万端、ホテルに戻りチェックアウト。今日のメイン観光「仙台城跡」に向かう。せっかくのなので、地下鉄に乗らず「青葉通り」を歩いて行くことにした。

 距離は地下鉄で3駅、約2,5kmで余裕の距離、この日の気温は30度越えの夏日、歩いていると汗ダクになる日差だった。そんな中でも「青葉通り」は歩いていて気持ちがいい。見た目は普通の都心にあるオフィス街なんだけど、街路樹の緑が心地よく、その木の高さが高く見え広々と感じる。

 ずんずん進んで行くと、広瀬川に架かる「大橋」だ、これを渡れば「仙台城跡」入口の「大手門」に着く! はずだったが・・・、なんと注意表示板に「令和4年3月16日に発生した福島県沖を震源とする地震により、仙台城跡において石垣の一部崩落のため迂回ルートをご利用ください」。

 しかたなく、表示に従い迂回ルートの「巽門跡」に進んだ。門跡を抜けたら直に急な坂、坂、坂の連続・・・、とにかく昇り続け、ようやく「本丸北壁石垣」に到着した。

広瀬川に架かる「大橋」、渡って坂を昇れば大手門のはずだが・・・
「本丸北壁石垣」の一部がブルーシートで覆われている。イヤな予感がする・・・

 最後のゆるやかな坂を昇って「本丸跡」に到着、まずは「政宗公」にごあいさつ・・・、イヤな予感が的中した。

 地震の影響で騎馬像は傾き、倒れる恐れがあるため四方をシートで覆っていた(現在は修復作業が始まり、完了予定は2023年3月末と発表されている)。まったく政宗公像が見えない!! 『ひと目、お顔を拝見』と、どこか見える所はないかと探し歩いた。斜め横にある「昭忠碑」(すみません!)の階段を昇りなんとか、政宗公の横顔を拝めたしだいだ。

 まぁ、色々あるけど来て良かった。眼下に広がる仙台市街地、大橋も見える。さぁ、仙台駅方面に戻るとしよう、最後のミッションをクリアーするために。

伊達政宗公騎馬像の幕、意地で撮った政宗公の横顔です。
晴れていれば、もっといいんだろうな。
最後の目的地は、ちょっと遅めの昼食を

 仙台駅まで戻ってきた、もちろん徒歩でだ。お腹も減った〜、志賀シェフからの「最後のミッション(笑)」に向かうため駅東口を後にした。目的は『毎日食べても飽きがこない、普通の中華そば』と教えてもらった「志のぶ支店 二十人町店」なのです。

 店にはお昼を外して行ったが、お客さんが数人並んでいた。まぁ、焦らず

待つことにした。20分ほどで店内に入れたが、店内でも並んでいた・・・さ

らに待つこと20分。やっと、席に座りオーダーが済んだ、だがここからなのだ! 先に着席している人を見回してもソバがない!? この後の予定を考えると、少々焦りがでてきた・・・、駅まで徒歩15分、お土産物色に1時間・・・、仙台駅から空港駅まで30分・・・・、ここを3時に出れるのだろうかと(冷汗)。

 座って待つこと30分、目の前にソバが出てきたのが2時20分! とにかく急いで食べるしかない!

志のぶ支店の外観と中華ソバ(600円)

 一口目は焦り過ぎて、熱くて熱くてよく判らなかった。二口目はゆっくり、さまして食べると「うっ、旨い!」。

 スープは醤油薄味で、鶏系の上品な旨みと昆布や鰹の和出汁っぽさを感じる味だ。麺は細麺ストレート、ボリュームもある。具はチャーシュー、メンマ、ネギのオーソドックスなトリオ。このチャーシューがあっさりしていて昭和を感じさせる味だ、全体的になんだか懐かしい。本当にこれは毎日でも食べれるソバだよ〜! 志賀シェフ。

 10分で食べ終わり、2時半過ぎにはお店を出た。駅へと急いで戻りながら思った、『あの店が関西にあったら、絶対にせっかちなお客と揉めるだろうな。東北の人は本当に我慢強い!!』。

 最後のミッションは冷や汗ものだったが、お土産も買い、晩ご飯のお弁当も買えたし、志賀シェフからの情報はほぼクリアーできた!

 1泊2日にしては詰め込み過ぎたかもしれないが、コロナ禍で溜まりに溜まった鬱憤を発散できた気がする。ロケハンのような旅だったので、今度来た時にゆっくりと巡りたい、必ず長めに再訪問をする! さぁ、帰るかなぁ。

仙台空港で最後の記念撮影。ありがとう宮城です。

 
 
前編はコチラ↓

震災遺構 仙台市立荒浜小学校〜 定義とうふ店

極楽山 西方寺 山門

 
 

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