ソノひびヨリ 第二◯話
奈良県・奈良市 『コスモス寺に大仏さまへ、「なぜじゃ?」』

般若寺 通称・コスモス寺
「三都物語」に入らない「奈良」

 奈良には不思議に思うことがあった、それはまだデザイナーとして駆け出しの頃の話だ。その頃に働いていた会社に、JR西日本さんから奈良キャンペーン・ポスターの仕事が舞い込んで来た。その当時、JR西日本さんと言えば「三都物語」なる大キャンペーンを常時行なっていた。

 この「三都物語」の三都は「京都」「大阪」「神戸?」だった、これって疑問に思いませんか!三都の括りなら、平安京から江戸まで都があった「京都」、豊臣家が天下を獲った後に築城し、天人・秀頼の居城であった「大阪」。ここまでは納得できる! で、次の「神戸」って平氏が遷都した「神戸・福原」、でもこれ約170日後、京都に帰還してしまった。これは「都」じゃない、それならば平城京や大和政権があった「奈良」じゃないですか!?

 と、子供だった私には、大人たちの忖度も分からずにほざいていた。そして、奈良キャンペーン・ポスターの提案には、大仏さまをメインビジュアルにして、ただ一言のキャッチコピー『なぜじゃ?』と入れ提案したのだ。

 もちろん、見事に却下された(笑)。そんな思い入れがあった古都の街を、コロナ禍の休日に日帰り散策してみた。

近鉄奈良駅アクセスビル前にて
大仏さまは「ちょっとまて、なぜじゃ・・・」と言った

 秋晴れの朝9時に近鉄奈良駅を出発、大宮通りを「東大寺」に向かう途中、東に1kmほど進むと何やら新施設があった。2018年にオープンした複合飲食施設「東大寺門前 夢風ひろば」だそうだ、魅力的なお店がありそうだが今日は平日の朝、まだ空いていない・・・。ここから「東大寺」に通り抜けできると書いてあったので先を急ぐことにした。

 急ぐと言っても、歩いて2分ばかりで「東大寺南大門」に到着だ。この門にはご存知、国宝で「運慶・快慶」の共作、国内最大の金剛力士像が睨みをきかしている。ここ奈良公園には、柵がないから、国宝の仏像が24時間(年中無休・無料)でいつでも見られる大サービスの仏さまなのだ(笑)。

 南大門をくぐって直ぐ左手には「東大寺ミュージアム」がある、ミュージアムの前には大仏さまの実物大・両手モニュメントがあり、なかなかのインパクトだ! その掌の上に孫悟空のように乗ってみたいものだ。

東大寺南大門だ、年中無休・無料・24時間いつでも国宝が見れる! コンビニみたいな国宝だ。

 

大きいけれど、イメージはもっと大きいのかと・・・
でも、人がジャンプして撮影すればインスタ映えはするのだろう。

 などと、言っている合間に「東大寺中門」、ここで拝観料600円(おとな)を払い入場。いつ見ても、とにかく圧巻の東大寺・金堂(大仏殿)の大きさだ〜、奈良時代に創建されてから二度の焼き討ちに遭い、現在の建物は江戸時代に財政難のため少し縮小され再建されたらしい。それにしても、大きい!!

 ここで色々書くよりも(皆さんもご存知だろう)、ここにきて大仏さまと対峙すれば、この荘厳さが分かるだろう(笑)。こうして大仏を見ていると、やはり「三都物語」に奈良が入っていないのはおかしい!! ただ、これだけは書いておきたい。

金堂(大仏殿)の巨大なるシンメトリーの美しさ〜。
このアングルの大仏さまは「ちょっとまて、なぜじゃ・・・」と言っているようだな。
本日、二度目の「なぜじゃ・・・?」に

 東大寺・金堂あとにして、正倉院横の小径を歩き次の目的地「般若寺」通称コスモス寺を目指す。

 距離にして約2km弱のウォーキングを楽しむ、坂を登りきり般若寺町のコンビニで一休憩。きた道を振り返ると東大寺・金堂の屋根が見える、ここでもその大きさに驚いた、時代を超えた権威の誇示とでも言うのだろうか・・・と変な感心をしてしまう。

般若寺町のコンビニにて撮影

 ここから「般若寺」には目と鼻の先、コスモスが咲き誇る風景を期待して足をすすめる〜。奈良街道を進むと般若寺の「国宝・般若寺楼門」が姿を見せる、ここも24時間コンビニ国宝だ〜。

 この「国宝・般若寺楼門」は鎌倉時代に「金堂」や「十三重石塔」を取り囲む「廻廊」に設けられる門として建立された。その後の戦乱からも難を逃れて、奇跡的に現在まで残っている、「楼門」建築の区分では日本最古の建造物なのだ。尚、「般若寺」自体は飛鳥時代の創建と言われている古刹。まぁ、とにかく古いのです。

奈良街道沿いに鎌倉時代の姿を残している「国宝・般若寺楼門」

 「国宝・般若寺楼門」を通り過ぎると、拝観入口がある、ここで拝観料500円(大人)を払い寺に入る・・・(絶句)。『なんとも、緑が美しい!』、いやいや違うここは「関西花の寺 第十七番・般若寺」ですよね? 完全に期待を裏切られた〜〜、それも悪い方にだ。境内のコスモスは2分咲きほどで、目にしみるほどの鮮やかな緑がそこに広がっている・・・。

ぽつぽつとコスモスが咲いているが、これでは画にならない。
時期を読み間違えたみたいだ・・・、情報は調べたのだが・・・無念。

 仕方がなく、コスモスが集まって咲いている、まだましな場所を探し写真を撮るはめだ。そうしていると、なんだか賑やかな犬の鳴き声が聞こえて来た。そちらの方に向かって行くと、小型犬が10匹ほどいる、なにごと? どうやら、今日はこの寺で「愛犬家インスタグラマーたち」の撮影会が模様されているみたいだ。コスモスが咲いてないし、少し混み合いガヤ付きだしたので早めの退散にすることにした。

 昼も過ぎ、そろそろお腹の減りも限界なので予約しているレストランに向かうことにする。

どうしてコスモス咲いていないのでしょうか? と石仏に聞けば。石仏も「なぜじゃ・・・?」と答えたような気がする。
「大和野菜」は日和がいい

 レストランは「奈良町」にあるので、般若寺に近い「奈良坂南口」よりバスで一挙に「県庁前」まで行き、そこから徒歩で向かった。いつもは行き当たりばったりなのに、今回はなぜきっちり予約をしているかと言えば、もちろんそこが人気店でもある、でも、それだけじゃなのだ。

 それは先日、新聞で「大和(奈良)野菜」と言うものを知り興味を持った。「大和(奈良)野菜」とは、古来より(実は戦前から)奈良盆地の肥沃な土地で育ってきた野菜の遺伝子を持つ野菜のことなのだ。1989年から伝統野菜の選定がはじまり、2005年に最初の認定が行われ「伝統野菜」10品目、「大和のこだわり野菜」5品目が認定された。現代は追加認証で20品目になっている。

 そんな「大和(奈良)野菜」をランチで食べれるレストランがあると聞き、ここ奈良町「旬菜ひより」さんにお邪魔したのだ! (余談・名前のひよりがいい、本誌の名前と似ているから・笑)

奈良町「旬菜ひより」さんの店頭で

 店内に入ると、オーダーストップ2時半だと言うのに凄い賑わいだ。上品な老夫婦、家族で何かのお祝いをしている団体やマダムたちの会食、客層を見ていれば、ここは良いお店なんだと感じる。アテンドされた席も半個室の静かなテラス席、天窓からこぼれる日差しがさらに「大和(奈良)野菜」を期待させてしまう〜〜。

 オーダーは「ひなた」税込み2,310円をチョイス。献立は「野菜の5種盛り、大和野菜いろいろ、岩魚塩焼き、古代米、香の物、汁物、デザートの自家製わらび餅」。さぁ、いただこう〜!

 まずは5種盛りの「ほうれん草お浸し」から一口、『おぉ! 野菜だ』。次に「にんじんキンピラ」、小鉢の「そうめん瓜酢の物」と次々箸をすすめる。

 この野菜の感想は、とにかく「コクと深い味わい」で、じんわりと後味に甘みを感じる「ザ・野菜」としか言えない。「旨く、新鮮で、懐かしい味」の野菜たちだ! 悔しいのが味のことを書いても伝わらない(稚拙な文章では・・・すみません)ことだ。是非一度、食して欲しい野菜だ。

 お腹も満腹、期待以上の味とお店のサービスに満足! そんな幸福感を胸に、奈良町を散策してこの「なぜじゃ?」の日帰り旅は終わるのだ。そう言えば、今回の散策ではシカを見かけなかったな?

これも、新たな「なぜじゃ?」だな(笑)。

 尚、料金は去年の情報ですよ、昨今の物価上昇で料金は調べてくださいね!

奧「5種盛り」、左手から「イチジク胡麻ダレ、ほうれん草お浸し、菊菜白和え、にんじんキンピラ、オクラ胡麻和え」
手前「岩魚塩焼き」
左手・上「大和芋饅頭あんかけ」右手・上「そうめん瓜酢の物」
左手・下「揚げナス南蛮風」右手・上「くり、サツマ芋、ナンキン天ぷら」
夕日に染まりゆく「猿沢池」

近鉄奈良駅

東大寺門前 夢風ひろば

 
 
東大寺〜「般若寺」

般若寺〜ならまち 旬彩ひより

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