ソノひびヨリ 第四三話
沖縄県竹富町・西表島
Vol.20 記念企画  ソノひびヨリ×やいま道行
『リベンジ! 冬の西表島。』
<最終回> 

ソノひびヨリ

2025年 12月18日~21日

雨模様の西表上原、デンサー食堂の前

数々の思い出を胸に、遥かなる人に手を合わす。

 12時前、郵便船が鳩間島に到着。後1時間で酒に狂った島から脱出できる(笑)、配収を終えた保雄さんに声をかけてもらい、無事、上原への帰路に着いた。本日の海上は雨が降っているけど波静か、鳩間島とは違い(苦笑)快適な船旅になった。凪の海のおかげで通常30分かかる海路が20分ほどで上原に到着。

 旧港駐車場に置いていた車(池田屋でお借りした)も一晩ちゃんと留守番してくれていた、だけどもう一泊ここにいてもらうことにした。恨むのなら盛雄さんを恨んでくれ(笑)、飲酒運転になるので連れてはいけない。そんな訳でバックパックを背負い歩いて宿方面に向かうことにした。保雄さんは、別れ際に『夕方、早めに来いよ!』と一言伝え車は郵便局へ走り去っていく。

 雨の中、向かう先は上原でいつも大変お世話になっている「デンサー食堂」。もちろん、昼食に名物「八重山そば」を食べるのだけど、そこには大切な大切な旅の目的があるのです。現在、デンサー食堂を切り盛りしているのが3代目店主の若旦那、前女将の息子さんなのです。その前女将には生前とにかくお世話になっていた、島での人との繋がりの切っ掛けを多く私に与えてくれた恩人なのです(言い出せばキリがないくらいです)。その女将の悲報を聞いたのがコロナ禍の2021年、どうすることもできなかった・・・。

 八重山そばを食べ終え、他のお客さんが帰ったタイミングで3代目店主に事情を話した。急な訪問なのに快く仏間へと案内してくださり、出会いからの思いを込め、仏前に思い出の詰まった写真を備え、手を合わすことができた。

 本当にありがとうございました(合掌)。

上・老舗デンサー食堂の店内。
下・名物「八重山そば」。西表に来たらこれを食べなくっちゃね。天国のネーネー!!

 お店を出たのが14時過ぎ、少し早いけど本日の宿に向かい荷物を預けることにする。デンサー食堂から歩いて4分ほどの農道入口付近に、2023年にオープンした「リゾートイン西表島」に向かう。県道から農道に入る坂の途中に宿はあり、真新しいコンテナハウスのような様相。チェックインを済ませ、室内へ入れば意外と広くセミダブルのベットとシックな照明が落ち着いた空間を演出している。これは快適な一夜になりそうです、ただ今夜も保雄さんとの呑み会、何時に帰ってこられるか定かじゃないけど(笑)。

上・坂の途中に数棟が並び立つ「リゾートイン西表島」
下・左手の一番上の棟にフロントがあります。
上・フロント棟の中にはアメニティーがあり自由にもらえます。
下・天井が高く居心地がいい部屋。

西表島の上原で、一番上原らしい時間を過ごさせてもらう、旅の贅沢さ。

 4時半、『早めの夕方に来い』と言っていたので呑み会の場所へ移動する。呑み会場所はレストランや居酒屋でもなく、言わば「大人の秘密基地」噛み砕けば私的な呑み部屋とでも呼べばいいのかな(笑)。外はまだ雨が降っているけど、宿から秘密基地には数分で行ける! その為にこの宿を選んだようなもの(笑)。

「大人の秘密基地」、のぞけば保雄さんが既に座って待っていた。

 基地内に入ると、普段着に着替えた保雄さんが『よく来た!よく来た!』と、仕事中とは打って変わって歓迎して迎え入れてくれた。乾杯もせず、11年間の積もる話に花を咲かせていたら、奥さんの道代さんの料理が並び出した~。

 見て仰天~!! 寿司屋のような舟盛り! 聞けば、昨夜、保雄さんが船を出し夜釣りに行った釣果で、それをさばき盛り付けしてくれたのが道代さん~、プロ並みの腕前すごい! 本当に長きに渡り、お二人にはお世話になりっぱなしです。

 舟桶の中には大好物の良い形良い大きさの生きの良いカツオ、それにタイの仲間で中々釣れない高級で美味しい赤魚が2匹も~。本当に感謝です。

超~鮮度バッグン! ボリューム満点 お店で食べれば1万円はするだろう。

 舟盛りが来たことが合図で「カンパイ~!」、私は話し食べ呑み話し食べ呑みで口を絶えず動かしている。いくら食べても減らない、嬉しい悲鳴。その姿を眺めていた保雄さん『さぁもっと食べろ~、今日は11年振りの再会とお前の還暦祝いさぁ~。この後ゲストも呼んでいるよ』。そんな嬉しい言葉に胸がいっぱいになるのだが「ゲストって、誰」?

 そうこうしていると料理の第二弾、第三弾と登場~。これまた大好物の白とピンクが色っぽい「カマイの刺身」、西表の山の旨味満載あつあつの山菜天ぷら! 

上・この旅三度目の登場、高級食材「カマイ」!
下・やはり「オオタニワタリ天ぷら」は旨い!!

 「カマイの刺身」に舌鼓を打っていたら、ゲストさんが一人また一人と登場。お互いに自己紹介をして呑み食いしつつ談笑、気持ちよく酔いも回ってきた時に遥か前の記憶が蘇ってきた。

 先ほど紹介していただいた一人「嶺井政則さん」の顔をまじまじと見直したのです。嶺井さんは学校を卒業後、2021年まで大阪で働いていたそうで(東三国で沖縄料理屋を経営していた)、そんな嶺井さんに見覚えがあることに気づいたのです。

 記憶の足場を確かめるように私が「大阪十三(じゅうそう)の『はながさ』で働いていなかった?」と聞けば。彼は『働いていましたよ、その後、独立しましたけど』。さらに確認「2010年頃だけど? はながさで働いていた?」。『はい、いましたよ!』。これで決定的だ、私は彼と15年前大阪で出会っている~! それも昼間お参りした(お仏壇に)デンサー食堂の前女将が関係している! 

 2010年当時、女将が八重山舞踊の公演で来阪した時のこと、西表ではいつもお世話になっているお礼に食事に行ったのです。食べてる途中で女将が『気になる店があるんだけど。消息不明になった西表の子が居るかも知れないんだよ、確かな情報じゃないんだけどね』と呟いたのです。それを聞いた私は「直ぐに行ってみようよ! いないなら居ないで仕方がない、確かめに行こう!」とお勘定を済ませタクシーで十三の「沖縄料理はながさ」まで走ったのです。その結果、運よく女将と再開できたのが消息不明になった西表の子こと、目の前にいる「嶺井さん」なのです。

 この場所で、また、お仏壇にお参り後に、嶺井さんと偶然に会えたのも女将の仕業かも知れない(笑)、相変わらずお茶目なネーネーだよ、ホントに。

上・現在、西表でレストランカフェ「島ガーデン嶺」をされている嶺井さん。
下・2010年、女将と嶺井さん再会の瞬間。
その後も島時間で続々と現れるゲストさん!
左・道代さんのお里のおぼっちゃま(笑)!
右・はっちゃける小学校の教頭先生?

 嶺井さんとの邂逅を噛み締めていたら、締めの料理が登場! 熱々のカマイ汁とジューシー(炊き込みご飯)。ジューシーはパック入り、余れば持って帰れるように道代さんが気を利かせてくれている。胃に隙間がないはずなのに、なぜかカマイ汁とジューシーが目の前から消えふせる~(笑)。それぐらい美味しいのです!!

上・カマイの中身の出汁が効いたカマイ汁。
下・道代ネーネーのジューシーはいつ食べても美味しい! 他では食べられなくなる。

 今呑み食いしているところは、宿屋でも食べ物屋でもなく普通のお家です。そこで、こんなにも歓迎してもらい豪勢な料理をご馳走して頂けるなんて、なんと幸せな還暦祝いだろうか(涙)。今更ながら西表の八重山の人の暖かさを実感する「みんなさまありがとう」と胸の内でつぶやいた。そんな思いを察したのか保雄さんが横笛を取り出し、嶺井さんに三線を渡した。

 曲はもちろん、西表の教訓歌「デンサ節」だ。嶺井さんは子供の頃、三線を保雄さんから教わっていたらしいく、師弟の共演を聞かせていただいた。曲はもちろん、西表の教訓歌「デンサ節」だ。

 心に沁みるデンサ節を聴きながら、西表最後の夜が更けていく。

 上原ぬデンサー 昔からぬデンサー

 我ぬ心 言ざば 聞きゆ給り デンサー

嶺井政則さんの三線と歌、師匠である保兄は横笛で共演
最後は師匠の保兄がデンサ節を歌ってくれた。滅多なことでは絶対歌わない、対決な歌を私のために歌ってくれた。
上・農業、商業、工業などに長年精励し、優れた技術や事績を持ち、他の模範となる人物に授与される日本の褒章「黄綬褒章(おうじゅほうしょう)」。保兄は2021年に授与された、本当に尊敬できる兄貴分です。
下・2008年の保兄の働く姿。かっこいい!

初日・曇り、雨、雨、最終日・曇りのち雨。

 本日は帰阪の日、また慌ただしい1日になるはず。朝7時、宿をチェックアウトし車を拾い保雄さんの家に向かう。昨夜のお礼とお別れの挨拶を済まして、大原集落まで約1時間のドライブで池田屋さん向かった。

 道中、この旅のことを振り返ってみた。短い時間だったけど、大事な目的を2つ叶えることができた、大切な人たちとも再会できた。その上、予定外の方(笑)とも会うことができ、幸運だったなと思う。ただ「リベンジ! 冬の西表島。」は完全に敗北だ・・・、2日間はお日様を見ていない、ずっと雲に隠れていた。恐るべし冬の西表島だな、次のリベンジの機会を伺うしかない(苦笑)。 

上・道中、少しだけ雲が切れ青空が見えた。
下・大富集落まで戻ってきた、仲間川を渡れば大原です。

 1時間の運転を終え無事、車を池田屋さんに返却し大原港に向かおうとしたら。女将の和子さんが『朝ご飯食べてないでしょ? お味噌汁とご飯だけだけど食べなさい。』、有無を言わせず用意してくれる(笑)。石垣に渡るフェリーの時間まで、まだ1時間強はあるけどこの展開に不安がよぎった(笑)。

池田屋さんに戻ってきた。ご好意で朝ご飯をいただきました。

 食べていると『守(池田屋オーナーの)は畑にいるから、畑に色々作ったのよ。あとで見にいきましょ♪』と和子さんのペース全開です。食べ終わると、畑には歩いて1分で行けるのに、なぜか? 車に乗り畑とは逆方向へと走りだした・・・。どうやら、他にも見せたいところがあるようだ、こうなれば時間いっぱい身を任せるしかない(苦笑)。最初に案内された場所は、ご近所さんの庭に咲く「サガリパナ」・・・知っています。次に向かったのが製糖工場の裏のため池『ここに珍しい渡り鳥が飛来するのよ~』・・・、はい、それも知っています。『あっ、ここの農水路には大きな大きなスッポンがいるの』・・・あっ、それ私が見つけて捕獲に失敗したことをお伝えしました・・・。

 こんな親切なのだけれど不毛なやり取りの末、あっという間に9時・・・あと30分でフェリーは出航。そのフェリーに乗らなければ、石垣発12時30分の飛行機には乗れないのですけど・・・。そのことを告げると慌てふためく和子さん、本来の目的の畑へ急行するのだった(笑)。

 慌ただしく、畑仕事中の守さんに笑顔で別れを告げ港へ向かおうとした。ふっと、見上げた空に、虹の架け橋が現れていた。

畑の横に朝取りの新鮮野菜無人販売所を設置している。直販の登りに爆笑、だってそうでしょ! 隣で作っているんだから。
その奥には、ここにも秘密基地! 集落の人たちが持ち合いで呑み会う場所を作っていた。西表の流行りなのだろうか?
鈍曇りの空に突然現れた虹の架け橋。

 冬の西表にリベンジはできなかったが、この「虹」で最後に爪痕を残せたかも知れない(笑)。今回の旅でお世話になった方々へ、本当にありがとうございました! また、必ず会いましょう、それまでお互いに元気で。さようなら、愛しき人たち!

大原港より石垣に向かう安永観光のフェリー。急に豪雨になった・・・。
石垣の730交差点、A&Wで昼食をテイクアウト。                         
石垣空港で搭乗前にランチ。先方、買ったハンバーガーに、朝に持たせてくれた道代ネーネーのぽーぽー。
待てど飛ぶ気配がなく、待ち続けた旅の終わり。

<終わり>

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