文・写真 やまんなかタヌキ
家族経営の動物園
今しかない!と緊急事態宣言が解除になった6月、念願だった香川県のしろとり動物園に行ってきた。
ここは、全国の動物園のほとんどが公営なのに対して「私立」、しかも「家族経営」という珍しい動物園。
元々創設者のご夫婦はサーカスの調教師で、その時に個人で飼っていたトラやライオンなどを連れて、東かがわ市の山中を開拓し動物園を開いたという驚きの施設である。ご両親が今でいうDIYで作った動物園を今は息子さんが引き継がれ、地域に愛される温かみあふれる動物園として進化し続けている。
アフリカ象のパトラ
今回一番のお目当てはアフリカ象の「パトラ」(クレオパトラのパトラです)。モフモフじゃなくてゴメンなさい! でもまつ毛や尻尾の毛はファッサファサ~。推定30代後半のとても賢い女の子で、子供の頃にアフリカからやって来ました。
全国でもアフリカ象を飼育している動物園は少なく、象の寿命は人間と同じくらいなので、パトラは繁殖も期待される年齢ですが、これが非常に難しい。全国に雄の象は少ないうえに(発情期の雄はとても攻撃的で危険なため動物園は雌を飼う傾向にある)、移動やカップリング、約2年にも及ぶ妊娠期間など難題がいっぱい。しかも飼育下の方が寿命がかなり短いという説もあり、このままでは動物園から象がいなくなる未来が来そうだ。昨今市原ぞうの国や徳島動物園で象が急死したことは非常に残念で、状況は益々厳しくなっている。
パトラは毎朝人間でいう「通勤カバン」ならぬ「通勤タイヤ」を鼻にぶら下げて、飼育員さんの掛け声と共に屋外放飼場へ出勤している。インスタライブでは小さく見えるタイヤは大型トラックの巨大タイヤで、その日も鼻にぶら下げて歩くところが見られた。軽々と運ぶ姿はダイナミックかつ雄大で興奮した! 餌やり体験のキャベツを丸ごとあげると、鼻を吸盤のように上手に使って口に運んで美味しそうに食べてくれた。その日は見られなかったが、パトラファンや近所の農家から届くスイカが出ることもあり、目を輝かせて近づいたかと思うと、鼻でグルッ! と巻いて一気に口へ。「バキッ!」とスイカの破裂音がしたら後は汁をこぼすまいと大切に食べる様子がとても可愛い。気になる方は、副園長さんのインスタグラムアーカイブ「♯shirotorizoo」で是非ご覧になってほしい。象さんの魅力を再発見すること間違いなしです。
実はパトラ、今年に入って何度か夜中に倒れるという心配な状況が続いた。飼育員さんの献身的な看病で回復しているが、象は倒れて自身で起き上がれないと、4トンもの体重が片側にかかってしまい、命の危険も出るらしい。夜中もモニター監視を続けることで飼育員さんが繋げた命。この先も力をあわせて元気に長生きしてほしいと願うばかりだった。
<9月8日の後編に続く>
しろとり動物園
マルタツうどん