ソノひびヨリ 第十一話〈後編〉
熊野古道・中辺路は修行の道だった
和歌山県 世界遺産熊野古道・中辺路
「滝尻王子〜高原霧の里泊〜継桜王子」

継桜王子

 
 

霧の郷たかはら(朝 八時出発) 〜 大門王子(距離 約約一,八km・高低差 約二四〇m・歩行時間 約五〇分)

 朝霧を見て、美味しい朝食を頂き、八時に出発。本日最初のポイント1,8km先の「大門王子」を目指す。集落の外れ位から、舗装はされているが急な上り坂が現れた! また「これからか地獄が始まるな」と気を引き締めた。
 そして、集落の終わりに佇む地蔵尊を過ぎれば、本格的な石畳の山道に入り暫くは昇りが続く。一里塚跡を越えた辺りからは、気持ちのよい平坦(比較的)な道になっている。この辺りで「キ~ン キ~ン~」と鳴く声に驚き、辺りを見渡すと親子三匹の鹿が居た。おお!神の遣いだと喜び、内心では猪でなくて良かったと胸を撫で下ろした(苦笑)。
 その後、また昇り「高原池」を通過し、またまた急な階段を昇り、苦行の果て、出発から約50分で「大門王子」に到着した。

高原池
これを昇れば「高原池」。
高原池
「高原池」は池と言うより沼っぽい、曇ってきたせいか陰気で怪しげだ。
大門王子
「大門王子」でスタンプを頂きます。

 
 

大門王子 〜 十丈王子(距離 約約一,五km・高低差 約三〇m・歩行時間 約三五分)〜 上多和茶屋跡(距離 約約二km・高低差 約一〇〇m・歩行時間 約五〇分)〜 大坂本王子(距離 約約一,九km・高低差 約三〇〇m・歩行時間 約四五分)

 ここから次のポイント「十丈王子」までは比較なだらかな道が続いてくれた。「十丈王子」にはトイレがあるので済ましておくこと、この先、暫くトイレは無いので。
 トイレ休憩後、「大坂本王子」を目指し再スタートした途端、上り坂・・・。その上、道が細く右手が崖になっている所もあり要注意です。「小判地蔵」「悪四郎屋敷跡」を通過すれば、下り、昇り、下り、つづれ折りの急な昇りになる、このルート最高度の「上多和茶屋跡」標高688mに到達。霧の里・高原が約400mほどの標高なので、ここまで約300mほど登ったことになった・・・(しんどいです)。

小判地蔵尊
その昔、巡礼者が飢えのため小判をくわえ行き倒れ、それを哀れんで建立された「小判地蔵尊」。

 次のポイント「大坂本王子」まで約2km、こんどはひたすら(約300m)下っていくのだ「三体月観賞地」までの道は古道らしい道が続くので楽しめる。ただ、そこを通過した辺りから車道を挟み「大坂本王子」まで急な下り坂なので足を痛めないように慎重に歩くことです。
 「十丈王子」から「大坂本王子」約4km(1時間40分)の長い行程、11時10分、そろそろ腹が減ってきた。

三体月観賞地
「三体月観賞地」手前の気持ちのよい古道♪この辺りで、毎年十一月二三日に月が三つに分かれて見えるそうだ。
大坂本王子
急な道を下り、沢を渡ればチェックポイントの「大坂本王子」

 
 

大坂本王子 〜 道の駅・熊野古道中辺路(距離 約約八〇〇m・高低差 約五〇m・歩行時間 約一五分)〜 牛馬童子像(距離 約約八〇〇m・高低差 約四〇m・歩行時間 約二〇分)〜 近露王子(距離 約約九〇〇m・高低差 約四〇m・歩行時間 約一〇分)

 腹が減ってきたので700m先にある、牛馬童子口バス停前の「道の駅・熊野古道中辺路」で昼食を取ることにした。古道と国道311号が接している所に「道の駅」がある。この辺りは観光客も多いからか、色づく広葉樹林が立ち並び美しい。暫しの休息だ。

道の駅・熊野古道中辺路
 紅葉をくぐって国道を渡れば、パラダイス♪の「道の駅・熊野古道中辺路」。
こんにゃくいなり
昼飯には「郷土すしトリオ」と「草餅(粒あん)」。
すしは左から「サンマすし」「こんにゃくいなり」「めはりずし」、ごちそうさまでした!

腹も満たして、トイレも済まし、800m先のスタンプポイント「牛馬童子像」を目指し古道に戻る。国道から古道に戻る道の紅葉は本当に美しく、ひと時でも足の痛みを忘れさせてくれる。
 「牛馬童子像」には古道を少しはずれた、石段がある丘の上にあった、休憩後とは言え寄り道は辛いけど、もちろん昇ってお顔を拝ませていただいた。童子像は長年の風雪により劣化が激しく、絶対に触ったりしないようにしてください!
 さぁ、ここから約500m先の「近露王子」を目指す、約10分間、ほぼ、下りの道を(喜)。

古道本道に戻る枝道を、紅葉のアーケードが演出している。「さぁ〜行くのだ!」と。
牛馬童子
いつの時代からここに鎮座しているのだろうか、静かなお顔の牛馬童子。

 
 

近露王子 〜 楠山坂登り口(距離 約1,4km・高低差 約60m・歩行時間 約23分)〜 継桜王子(距離 約2,5km・高低差 約150m・歩行時間 約50分)

 木々が開け、土道から石畳の道に変わると眼前に「近露の里」が広がり、人里に下りてきたなと感じれる、ちょっと嬉しい風景です。石畳を下りきり、車道を進むと日置川に掛かる北野橋を渡ったら、直ぐ左側にスタンプポイント「近露王子」が現れる。さすがに人里だ、立派な「杜」になっていると感心した。
 古道ルートに沿い、近露の里集落を見ながら歩くと変な店がった。アンティークショップ?いや、ガラクタ屋かな(すみません・失礼)。表のディスプレーには昭和懐かしい「黒電話」が三台も飾られていた。この里を散策したかったが、この先に「どのような道があるか分からない」から、体力を温存するため先に進むことにした。

箸折峠
箸折峠からの眺望。石畳をくだれば、近露の里が良く見る。
近露王子
「近露王子」の碑
アンティークショップ
集落にある、ちょっと疲れを忘れほっこりできる「アンティークショップ?」

 今回の最終ポイント「継桜王子」約4km(歩行時間約1時間15分)を目指しスタートした。
 集落を抜けると、ゆるやかな坂道が続いた、高台にある近野小学校、中学校の前を通り進んで行く。坂道といえどアスファルトの穏やかな道を、だが直ぐにそんな喜びは打ち砕かれる。
 徐々に細くなる車道の先には、古道の道標の先が山に向かっている・・・、「楠山坂登り口」(絶句)。ここから「継桜王子」(約2,5km)まで高低差150m、即ち、高度150m上がらなければならない・・・先ほど、体力を温存していて正解だと思い、しぶしぶ山道に進むのだ。

熊野古道
極楽から地獄に突き落とされた道標、落ちるならいいが、登るのはイヤだ。

 昇りの山道を10分ほど昇ったら、急に眼前が開け舗装された林道になった、それでも急な登りに変わりない。その苦行をさらに10分、やっと野中集落に入り平坦な道になった。
 この集落付近は、明治末に絶滅したとされている「ニホンオオカミ」の最後の生息地だったそうだ。紀伊山地の奥深さを眺めていたら、今でも隠れて生きていてもおかしくないと思ってしまう。

乙女の寝顔
この集落の伝記が表示させたパネルだ。
下の写真は「乙女の寝顔」、すこし鼻ペチャで可愛い。

 集落を抜けくねくね曲がる車道を100m進むと、ポイントではない「比曽原王子跡」の表示、この先に分岐があり左側の上り坂を進む・・・(右の下りに行きたいが、かなりの迂回になるので注意です)。ここまで来ればゴールの「継桜王子」までは約800m、緩やかな昇り坂だ。
 何の問題も無くご機嫌に進み「継桜王子」に到着、旅の無事のお礼参りもそこそこに、先にある「とがの木茶屋」で一服する体たらくだ。途中で水分を切らしていたので(近露の里の後には自動販売機は無いので注意)、お茶をいただき落ち着いて周りを見渡すと、なんとも美しい紅葉の風景が広がっている。旅の時期を秋の熊野古道にして正解だったと思い、「もののあはれ」の分かる日本人でよかったと、感謝の気持ちを表して、も一度「継桜王子社」にお礼参りした。
 だが、この歩き旅はここで終わりでなかった、眼下遥か下の「野中一方杉バス停」まで、約20分(1,8km)下らなくてはならないのだ・・・最後まで修行地獄だ!

 

継桜王子
この旅、最終チェックポイントの「継桜王子」
とがの木茶屋
「とがの木茶屋」前の紅葉はみごと!!青空とのコントラストが美しい。
熊野古道
遥か下、国道まで下ることを知り愕然とする。
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